「今回はバブルではない」
日経平均株価が過去最高を更新した22日の前後のテレビ報道をみていこう。
「クローズアップ現代」(NHK総合)は20日、「“バブル”を超えるか 株価“史上最高値”に迫る」をテーマとして株価の急上昇と今後について分析した。
コメンテーターは、一橋大学名誉教授の伊丹敬之さんと大和総研副理事長の熊谷亮丸さん。前回のバブル時代を振り返って、伊丹教授は「日経平均は最高値をつけた翌年早々から暴落したが、土地価格が1年ほど上昇していたのでバブルではないと思っていた。(その後のバブル崩壊で)私自身がゴルフ場の会員権を購入して大損しました」と苦笑する。熊谷副理事長は「(大学を卒業して)銀行に入行しました。クリスマスには高級ホテルを借りてパーティをする時代でしたね」。
バブルかどうかは誰もわからない。「投機のエピソードは常にささやきによってではなく大音響によって終わる」とガルブレイスは述べている。これは一般論であり、数世紀にわたってしばしば繰り返されたというのである。
伊丹教授も熊谷副理事長も今回の株価の上昇は、バブルではないと解説した。伊丹教授は「当然の結果だ」と断言する。
「国内総生産(GDP)がドイツに抜かれて4位になったとはいえ、技術力がある。コロナ対策で各国が行った政策によるマネーが投機マネーとなって日本株に向かってきた。日本の株式市場は世界のなかでも上場企業数が多いこともある」という趣旨の分析をしている。
熊谷副理事長も「バブルではない。PER(株価収益率:株価が1株当たりの純利益を示す指標)は2月16日時点で、日本は16.26である。米国は平均で20以上。(前回のバブル当時の)日銀総裁の三重野康氏は徹底的にバブルを潰そうとしたが、いまの植田和男氏は徐々に金融政策を進めようとしている。今後懸念されるのは米国の大統領にトランプ氏が復活するのか、中国経済、欧州の〝病人〟といわれるようになったドイツ経済の動向である」と、伊丹教授とほぼ同意見である。
番組は、今回の株の上昇要因と考えられている数値について、冷静な分析を行っている。
「海外投資家」については、海外の300社に日本株に対してポジティブかネガティブかをたずねたアンケート結果を示している。2022年には、ポジティブが26%だったのが23年夏ごろから増加してこの年は52%になった。逆にネガティブは、22年の48%から14%に減少した。
UBPインベストメンツは世界で約10兆円を投資している。日本株運用責任者のズヘール・カーンさんは「(以前は)日本企業は株主のことをそこまで考えていなかった。最近は株主還元が進んでいる」と、日本株投資の理由を指摘している。
中国からの資本逃避が日本に向かっているのか。海外に向かった資金は12兆5000億円と推定されている。香港の投資会社の顧問を務める劉夢熊さんは「資金は利益を求めて、水が低いところに流れていく。人々は儲かる場所に向かう。中国・香港から長期的に日本に向かっている」と、分析する。
それでも消費者への還元はなされていない
「日経ニュース プラス9」(BSテレビ東京)は、日経平均株価が史上最高値を更新した当日夜、高値の背景を分析した。メインキャスターは日本経済新聞編集委員の小柳建彦さん、コメンテーターには、独立系分析会社の智剣・Oskarグループの主席ストラジストの大川智宏さんと日本経済新聞編集委員の藤田和明さんが務めた。
日本株の上昇をけん引した、米国の半導体メーカーのエヌビディアに関する分析に重点が置かれた。同社の11月~1月四半期決算において、売上高が前年同期に比べて3.7倍、利益は8.7倍を記録した。予想を上回って、半導体メーカーとしては世界1位になった。
同社の好業績は半導体のなかでもこれから需要の増加が予想される、人工知能向けの半導体の将来性を市場に印象づけた。日本の株式市場で「エヌビディア 3兄弟」と呼ばれる銘柄が、史上最高値のうち420円分に貢献した。それは、半導体装置メーカーの東京エレクトロンであり、半導体検査装置のアドバンテスト、そして半導体設計分野で圧倒的なシェアを持つ英国のアーム社を傘下に持つソフトバンクである。