2024年11月23日(土)

田部康喜のTV読本

2024年2月24日

 「消費者の観点からは(最高値)の高揚感はない」と、コメンテーターの大川さんは指摘する。日本企業の2月21日時点の時価総額のランキングから、トヨタ自動車をはじめ輸出産業が目立ち、円安になったために利益が膨らんだ企業多い点を挙げた。

 藤田さんも「日本株について、海外勢は積極的に買っているが個人は利益の確定売りなどで売りと買いを行ったり来たりしている。さらに、投信や年金を運用している信託銀行も利益を出すために売っている。日本株の購入に個人が積極的に加わっていくかどうかが今後の相場を左右する」と分析した。

学ぶべきバブルでの失敗

 日本メディアの報道はいまのところ、現状をバブルとはみないで冷徹な分析をしているようにみえる。〝熱狂の時代〟ではないのだろうか。

 バブルが崩壊する過程の1980年代後半から90年代初めにかけて、筆者は記者として証券、都市銀行、生命保険などの金融機関と旧大蔵省の金融行政を担当した経験者である。経済学者のなかには、いまさら「バブル崩壊を予測していた」と宣言する人もいる。

 ガルブレイスが指摘しているように、資本主義は幾度となくバブルとその崩壊の歴史を綴ってきた。熱狂のなかで、正確にバブル崩壊を予言することは難しい。

 89年12月の大納会で今回更新された最高値を記録した当時、翌年の日経平均は4万円を超えて、5万円も夢ではないとメディアがあおったことを忘れてはならない。前回のバブルは、米国の悪化する経済状況を援護するために、円安に誘導した大量の資金が土地と株式に流れ込んだ。95年の「プラザ合意」がバブルの発端だったことを認識するのに時間を要した。

 土地高は異常な水準で、皇居の地価でカリフォルニア州が買えるとまでいわれた。大企業は新たな増資などによって得た資金を株式や債券投資に投じた。信託銀行が用意した特金・ファントラといった商品である。

 銀行は系列のノンバンクに資金を卸して、その資金が土地融資に向かった。旧大蔵省は、こうした資金を禁じる非常手段にでた。地価は一気に下がったが、その負債は巨額に達した。

 まず、大きな打撃を受けたのが住宅金融専門会社だった。われわれの税金である公的資金を投入する旧大蔵省の政策は、世論の反発を買った。

 本来は政治主導で、巨額の不良債権を処理すべきだったが、時間はいたずらに過ぎた。北欧や米国などで住宅資金の焦げ付きによる金融機関の処理については、さまざまな方法がすでにあった。その導入は遅れに遅れて、バブル崩壊後の30年の停滞は決まったともいえる。

 筆者が所属していた新聞社の経済部は株式や投信などの売買を禁じられていたので、前回のバブルの利得はない。地価の暴騰によるマンション価格が急上昇して、手が届かなくなった絶望感を覚えている。

 そうした状況のなかで、銀行の貸し出し部門別で、設備投資よりも土地融資が上回った異常性や、北欧の不良債権処理などの報道もしたが、蟷螂之斧(とうろうのおの:カマキリが前足を上げて、大きなことにたちむかっても難しい)だった。


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