2024年12月4日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年2月29日

海洋保護区と洋上風力発電

 2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させるという『30by30』(サーティ・バイ・サーティ)という目標が2021年の主要7カ国(G7)で約束されました。30年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。

 筆者はこれまで、微力ながらさまざまなメディアで科学的根拠に基づく資源管理の重要性を発信してきました。20年の漁業法改正をはじめ少しずつ良い方向に向かってきています。しかしながら漁獲枠が設定されていても、国際合意(WCPFC・中西部太平洋マグロ類条約)で国別漁獲枠が決まったクロマグロを除き、枠が大きすぎたり幼魚を獲り続けたりと効果がほとんど出ていないのが現実です。

 資源管理が進んでいない大変厳しい現実において、海洋保護区の設定は効果が出ます。皮肉なことに11年3月に起きた東日本大震災では、放射性物質の影響で強制的な禁漁区、海洋保護区が出来上がりました。

マダラの資源量推移(出所)水産研究教育機構のデータを基に筆者作成 写真を拡大

 東日本大震災に起因する漁獲圧の減少でマダラ、ヒラメ、サバをはじめ一時的に資源量が急回復しました。ところが上のグラフをご覧ください。資源管理が機能せずマダラやサバの幼魚の漁獲が後を絶たず、既に震災前の酷い資源状態に逆戻りしてしまいました。これは海水温上昇や外国漁船のせいではなく、資源管理制度の不備という主に人災によるものなのです。

 魚が減っていく本当の理由は、科学的根拠に基づく資源管理が出来ていないからです。このため国は2020年に施行された改正漁業法に基づき、TAC(漁獲可能量)や漁業者や漁船ごとに漁獲枠を配分する個別割当制度を進めようとしています。

 ところが、これまでの北欧や北米を主体とする海外での資源管理の成功例が「日本と海外は違う」「世界に冠たる日本の自主管理」などと伝えられてしまい、資源管理に関する誤解が生じています。このため、資源量が持続可能になっているノルウェーなどと対照的に、明確に資源が減り続けているのに、将来の自分たちの為になる数量管理・資源管理に反対してしまうケースがよくあり、なかなか進んでいません。

 そこですでにG7で合意されている『30by30』により海洋保護区を作り、その海域を拠点として資源が回復していく形にする。その海域を現在国が再生可能エネルギーの切り札として導入を進めている洋上風力発電の周りとし、漁獲圧力が低いキャッチ&リリースを主体とした遊漁船に開放すれば、海洋保護区だけでなく、そこで増えた資源が、周辺海域への海域にまたがるように回遊して漁獲できるようにもなるでしょう。

洋上風力発電機の目の前で釣れたヒラメ(筆者提供)

 大きな魚がたくさん泳いでいて資源が持続的になっている海。それを海外での成功例に倣って実現できれば、海外まで大きな魚を釣りにいかなくても、日本で昔のように釣れるようになります。

 手遅れになる前であれば、かつて水産業で栄えた地方が魚の資源が戻ることで活性化されていきます。そこで獲れた魚が「国産」として供給され、減少が続く輸入水産物の替わりに置き換わっていくことにもなるのです。

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