2024年5月26日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年3月11日

 道路と公園用地を確保して低層の耐火建築物を建て始めると同時に、中古機械を買い集め、バラック建設を許容してシューズ製造を開始していれば製造を続けることができたかもしれない。バラックから低層の防火住宅に順次移っていけばよかっただけだ。

「復旧よりも復興」の惨事

 東日本大震災での「復旧よりも復興」の象徴は高台移転である。高台移転とは、高台を造り、住民を移転させる計画だ。しかし、三陸の急峻な山を何百メートルも切り崩して盛り土するのは大変な工事である。

 盛り土した部分は、高さはあっても地盤が弱い。仙台郊外の丘陵地の谷を土砂で埋めた住宅地でさえ東日本大震災で地滑りが発生して大きな被害が出ている。

 三陸の住宅地の地価は、坪5万以下のものである。畑や田圃を宅地にすれば、さらに安くてすむ。しかも、人口は減少している。新たに高台の住宅地を作るなど、とうてい見合わない投資である。

 宮城県は11年6月10日に、東日本大震災で甚大な被害を受けた沿岸12市町で、住宅の高台移転など復興まちづくりを進めた場合のコストを試算している。それによると、高台移転は1万3900戸が対象で、総事業費は4250億円となるという(河北新報2011年6月11日)。

 4250億円を1.39万戸で割ると、1戸当たり3057万円となる。これは予算作成時の予定コストで、関西万博の工事費増額を見てもわかる通り、予算は、実際には増額するのが通常である。最終的に、高台造成費用は、1戸当たり5000万円にもなるという(「オーバースペックの復興 1100億円で12mかさ上げる陸前高田」Wedge ONLINE 2015年5月7日)。

 しかも、そのようにして造られた土地の全部に、人々が住んではいない。生活の基盤となる住宅や漁業のためのお金は十分には回ってこないからだ。もちろん、いくらコストがかかると言っても、危険なところに住まわせる訳にはいかないという反論があるだろう。答えはある。

 昔からの住民は、やや高い地域に住んでいたので、ほとんど津波で命を失っていない。高度成長期、人口の増加とともに、人々が低い地域に住むようになった。しかし、現在、人口は減っている。やや高い地域に移り住めば、大規模な造成工事は要らず、人々の安全も損なわれない。


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