2024年6月25日(火)

Wedge2024年4月号特集(小さくても生きられる社会をつくる)

2024年4月17日

 当日の参加者は5人。男性3人、女性2人で年齢層は70代~80代だった。監視室に入ると、矢巾町上下水道課主任技師の山本涼平さんが部屋を暖めて待っていてくれた。

 浄水場の概要説明後、場内設備を一通り案内してもらったが、参加者からは「24時間体制なの?」「薬品代はいくらかかるの?」など、矢継ぎ早に質問が飛び交った。「参加者は少なかったですが、それでも住民の〝熱量〟は変わりませんね」と嬉しそうに話していた山本さんが印象的であった。参加者からも職員に対し、「やりがいのある職場だね」「健康に留意してくださいね」と、温かい声かけがあった。

専門性の高い用語も易しい言葉に置き換えて説明する山本涼平さんの対応に誠実さを感じた

 今回が初めての参加だった高木伸雄さんは矢巾町のホームページを見て見学会に応募したという。吉岡さんの意志もあり、矢巾町の広報は手厚く、広報誌や登録制のメール、ラジオやテレビにSNS、最近では「やはナビ!」というアプリまで手掛けており、発信強化に熱心だ。

 吉岡さんは語る。「地域のみなさんを巻き込むというのは、〝行政の色に染める〟ということではありません。行政がすべて正しいわけではなく、批判もあってしかるべきなんです。ただ、一人ひとりが何かに気づき、何らかの主体的な考え方を持つこと。そういう方がいればいるほど、『強い矢巾町』になっていくのだと思います。私たちはその基盤を引き出すために、やれることをやり続けます」。

地域によって異なる水道の在り方
キーワードは「他人事から自分事」

 近畿大学経営学部の浦上拓也教授は「水道の維持・管理方法は、その地域の地理的・地形的条件や歴史的背景によって異なります。将来の姿を見据え、各事業体がその仕組みや形を再考し、地域に見合ったあり方に変わっていく必要があります」と述べる。

 住民(国民)もいつまでも受け身の姿勢ではいられない。昭和型から令和型へ、他人事から自分事へ─。「持続可能な形で自分たちの町の水道は自分たちで守っていく」という発想の転換が今、求められている。

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Wedge 2024年4月号より
小さくても生きられる 社会をつくる
小さくても生きられる 社会をつくる

全都道府県で人口が減少――。昨年7月の総務省による発表に衝撃が走った。特に地方においては、さらなる人口減少・高齢化は避けられない。高度経済成長期から半世紀。人口減少や財政難、激甚化する災害などに直面する令和において、さまざまな分野の「昭和型」システムを維持し続けることはもはや限界である。では、「令和型」にふさわしいあり方とは何か――。そのヒントを探るべく、小誌取材班は岩手、神奈川、岐阜、三重、滋賀、島根、熊本の7県を訪ね、先駆者たちの取り組みを取材し、「小さくても生きられる社会」を実現するにはどのようなことが必要なのかを探った。


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