2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2024年4月19日

 ウラル工場は、新規生産と並行して、旧戦車のリストア(修復)も手掛けている。それ以外に再生作業に従事している代表的な工場としては、前出のオムスクトランスマッシュ、サンクトペテルブルグ近郊に所在する第61装甲戦闘車修理工場、極東のザバイカル地方にある第103装甲戦闘車修理工場が挙げられる。

 これらの工場は、それぞれ年間200両ほどの旧戦車のリストアをこなすことができるようだ。また、22年9月には、ロストフ州カメンスクシャフチンスキーとモスクワ州ラーメンスコエに新たに装甲戦闘車修理工場を建設する計画も明らかになった。

 ちなみに、オムスクトランスマッシュは、10年にウラル工場の傘下に入っている。また、第61、103をはじめとする7つの装甲戦闘車修理工場も、プーチン大統領の決定により13年にウラル工場系列に入ったということである。

 これは後述の最新鋭戦車アルマータT-14がロシアとしては画期的な長いライフサイクルの利用を想定していたことから、そのサービス体制を充実させるための措置だったと言われている。もっとも、ウクライナ侵攻が始まると、実際には装甲戦闘車修理工場は、新型戦車アルマータの整備という当初の想定とは異なり、廃戦車の復元を生業とすることになったという逆説がある。

ゾンビ戦車の供給源

 そして、ロシアには何箇所か、退役した戦車が解体されるのを待つ戦車の墓場のような場所があり、旧戦車の供給源となる。中でも最大と言われる極東のブリヤート共和国ウランウデ郊外のヴァグジャノヴォ保管場には元々、3840両の旧戦車が保管されていた。それが、衛星画像の解析によると、23年5月には2270両にまで減少しており、この時点までに1570両ほどが再利用のために運び出されたとみられている。

 ちなみに、ウクライナ侵攻以前は、ロシアは保管場に置かれていた旧式戦車を定期的に解体処理していた。14年から22年までに、35件の解体処理契約が締結された。

 ところが、契約数は17年に減少し始める。国防省の担当者は当時、計画されていた1万両ではなく、4000両のみが解体されることを明らかにし、残りの戦車は「国際情勢の変化次第で」役に立つかもしれないと含みを持たせた。そして22年、国防省は戦車解体の契約締結を全面的に停止した。

 上述のとおり、ショイグ国防相は誇らしげに、23年に1530両の戦車が納入されたと語った。しかし、そのうち新車であるT-90M「プロルィフ」、T-72B3Mは、どんなに頑張っても300両くらいであろう。残りは、廃戦車が保管場から運び出され、ゾンビのように甦って、現役復帰したものと考えられる。

 廃戦車を再生するにしても、新たに据え付けるコンポーネントの調達は必須であり、国際的な制裁網に直面するロシアにとっては試練となる。『日本経済新聞』の調査報道により、19年にロシアがミャンマーに輸出した戦車用の照準望遠鏡6775台とカメラ200台を、ウラル工場が22年12月に2400万ドルで買い戻したことが明らかになった。こうした事例を含め、おそらくロシアはあの手この手で、コンポーネントや部品をかき集めているのであろう。


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