2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月30日

 上記の論説は、米国の対GCC政策の視点ではなく、サウジの視点に立った分析だが、サウジからすれば、イランの核武装の可能性が迫りつつある中、米国による明確な安全保障のコミットを欲するのは当然であろうし、ガザの衝突後、サウジ国民の95%が「アラブ諸国はイスラエルと断交するべき」と考えている中でサウジとイスラエルとの関係正常化は近い将来あり得ない。

 しかし、これまでの常識から判断すれば、サウジが要求する米国の軍事的なコミットメントを含むサウジとの安全保障条約は、単独ではサウジの人権問題への強い嫌悪感から米国上院の3分の2の批准を得られる見込みはほとんどない。イスラエルとの関係正常化をパッケージにして初めて何とか成立すると考えられたのでバイデン政権は、昨年の夏以降、イスラエル・サウジの関係正常化に躍起になっていた。

条約締結へ機運が高まっている理由

 しかし、最近、米国・サウジ安全保障条約の締結が間近という観測が出回っている。バイデン政権は、イスラエルとの関係正常化抜きで上院の批准を得られる見通しが得られたのであろうか。

 可能性としては、(1)11月に大統領選挙を控えるバイデン大統領は、ガソリン価格の高騰を抑えなければならないが、中東情勢の不安定さを反映して油価は高騰気味である。ここは油価安定のためにサウジの協力を得たい。(2)5月9日、ハラジ・ハメネイ最高指導者顧問は、「イランは核兵器開発能力を持っている。イスラエルがイランの核施設を攻撃すれば、イランも安全保障政策を見直す」と発言したが、イランの核武装の可能性が高まる中、GCCの動揺を抑え、域内に米軍が展開するためにもサウジとの安全保障条約が必要と考えているからではないかと思われる。

 サウジとの原子力協定の締結も進んでいるようだが、サウジ側の要求は同国の核武装への道を開きかねないので要注意である。

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