モーダルシフトの具体的受け皿になる内航船舶の分担率
国土交通省では、全国的な貨物の出発地から到着地までの経路などを把握することを主たる目的として、1970年以来5年ごとに「全国貨物純流動調査」(通称:物流センサス)を実施している。同調査では、1年間における貨物の出入荷(概要)に関する「年間輸送傾向調査」と3日間における貨物の出荷(詳細)に関する「3日間流動調査」という2種類の調査が実施されている。
新型コロナウィルスの感染拡大により1年遅れで実施された2021年の「3日間流動調査」をもとに各輸送モードの分担率を算出してみたところ、下図が示す通り、トラックが81.29%、海運が11.70%、鉄道が1.32%、航空が0.01%であった。
物流関係の読者の方はご存じと思われるが、一口に海運輸送と言っても、トラック輸送からのモーダルシフトの主たる受け皿となるのは、梱包せずに大量にそのまま輸送するドライバルク船(石炭や穀物などの資源)・リキッドバルク船(液体)・ブレークバルク船(建設機械や鉄道、鉄骨など)による「ばら積み輸送」ではなく、RORO船(貨物をトレーラーごと運ぶ船で、貨物を載せたトレーラーが自走して積み込まれる)やコンテナ船(国際規格の海上コンテナを専門に運ぶ船)、そしてカーフェリー(河川,海峡,内海などで隔てられた2地点を運ぶ船)による輸送である。
そこで、海運輸送の内訳を見ると、海運輸送全体に占めるRORO船の割合がわずか3.78%、コンテナ船の割合に至っては0.24%に過ぎないことが見て取れる。また、分類上トラック輸送に含まれるフェリー輸送がトラック輸送全体に占める割合は0.76%に過ぎないことも見て取れる。
この三つの輸送モードの分担率を全ての輸送モードの中に含めて計算し直してみると、下表の通り当該3モード合計でも1%を若干超える程度に過ぎないのである。
「2024年問題」の対策として国がまとめた「物流革新緊急パッケージ」においては、「鉄道(コンテナ貨物)、内航(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増」をめざすとされているが、フェリー輸送を含めても1%強に過ぎない内航海運輸送の分担率を倍増させたとしても、トラック輸送貨物の14%強が運べなくなる可能性さえ予想されている「2024年問題」の解決にどれほど貢献できるのか、疑問に感じるのは筆者だけであろうか。