香港政府は「司法の独立」を主張
このJonathan Sumptionによる寄稿は、香港の裁判官(海外裁判官のみならず地元香港の裁判官を含むすべての裁判官)が如何に劣悪な政治的環境に置かれているかを書いたものである。彼は「政権転覆の陰謀」の判決は法の支配が死んだことは必ずしも意味しないとしつつ、環境の悪化の故に海外裁判官が有益な役割を果たし得なくなったことをもって結論としている。なぜ、香港では法の支配は死んだと直截に書けないのか、些か不可解ではあるが、その内容に驚きはない。
このJonathan Sumptionの一文に対して香港政府は、6月11日に発出した2800語に及ぶ長文の反論の英文プレス・リリースを発出し、香港の法の支配が衰退しているが如く言うことは「全くもって間違い、完全に根拠がなく、正しく反駁されねばならい」との趣旨で延々と論じている。彼らが法の支配と司法の独立が保証されていると説得することに腐心していることが読み取れる。
民主派の反抗の抑え込みに成功した今、香港の金融その他国際経済に占める地位を維持・増進するため、外国投資と企業進出を呼び込むべく、法の支配と司法の独立を強調しているように思われる。彼らは、海外裁判官の存在自体がこの目的に資すると考えているようでもある。終審法院の長官は辞任した海外の裁判官の後任を然るべく補充する意向を表明している。
海外裁判官が彼等のこのような努力に加担することはいかがなものかと考えざるを得ない。英国政府は海外裁判官としての関与に否定的なのだと思うが、いまだ海外裁判官には(7月に退任するMcLachlinを除いて)7人――英国出身:3人、豪州出身:4人――が名を連ねている。しかし、遠くない将来、海外裁判官は消滅する命運にあるように思われる。