解体 ロシア外交

2013年12月19日

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 ヤヌコービッチは、就任後、ティモシェンコ元首相を投獄し、彼女が病気のためにドイツでの治療を懇願してもそれを認めて来なかった。欧米諸国はティモシェンコ投獄をかねてより、政治弾圧として批判し、再三に渡り釈放を要求してきたが、ヤヌコービッチはそれを拒否してきた。しかも、今回のAA締結に際しては、EU側が締結条件として、ティモシェンコの病気治療のための出国を求めていたのだ。だが、11月21日にウクライナ議会は、その出国を拒否する決定を出した。ティモシェンコにとって、出国もウクライナのEU接近も実現しないのは二重の打撃であったため、彼女は11月25日に無期限のハンストに入ったのだった(12月6日までにハンストは撤回)。

 また、ヤヌコービッチの支持者は、もう1人の野党指導者で世界ボクシング評議会(WBC)ヘビー級王者のビタリ・クリチコ氏から大統領選挙への立候補資格をはく奪する法律も可決していた。(なお、今回の抗議行動では、ティモシェンコの不在もあり、クリチコが飛躍的に存在感を増している)

 このような事情も、ヤヌコービッチがロシアを選んだ大きな理由である。何故なら政敵を非民主的な手段で排除したライバルなき選挙を公正と認め、資金援助をしてくれるパートナーは旧ソ連の民主化を求めないロシア以外にないからだ。実際、プーチン大統領は、11月18日にもウクライナの天然ガスの代金滞納問題で妥協を見せた。

ロシア、EU双方にとって重要なウクライナ

 旧ソ連圏への影響力保持を主張するロシアにとって、ウクライナの重要性はひときわ高い。ウクライナはロシア、ベラルーシと並び、ソ連を実質的に率いてきたスラブ系民族の国であり、キエフ公国の歴史もロシア人にとっては重要な心の拠り所だ。そんなウクライナを失っては、プーチン大統領が推進するユーラシア連合が成立するわけもないのだ。

 他方、EUにとっても、「東方パートナーシップ」対象国の6カ国の中で、ウクライナは経済や人口が最大規模であるだけでなく、歴史的にも欧州と関係が深い(ウクライナ西部はポーランドに支配されていた歴史がある)ウクライナとのAA締結は最重要課題であった。自由貿易協定(FTA)が計画の支柱ではあるが、民主主義や法の支配といった、ヨーロッパスタンダードの価値観を広めること、そして欧州の安全保障のためにも、資すると思われていたからだ。

 そのため、EUはウクライナの選択に失望を表明すると共に、ウクライナに圧力をかけたロシアを再三にわたり批判してきた。もちろん、それに対し、ロシアは無関係だと反発し、加えて、EUがウクライナを見捨てたとしてEUを批判している。

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