2024年7月16日(火)

解体 ロシア外交

2013年12月19日

 だが、ヤヌコービッチ大統領は「われわれは欧州との統合の道をさらに進む」と表明し、ロシアからの支援を確保しようとしつつ、EUやウクライナの有権者からもロシア一辺倒と思われないためにも、引き続き、EUカードを使い続けようとしている。

 また、ヤヌコービッチ大統領は、中国にも救済を求めた。12月3~6日、反政権デモが続く中、予定通り訪中し、戦略的パートナーシップ構築を含む約20の文書に調印した。ウクライナは、対中関係強化を経済的苦境打開の一助として重視している。5日には中国から80億ドル規模の経済支援も取り付けた。中国からの経済支援は、経済難にあえぎ、かつロシアへの「貸し」を増やしたくないウクライナにとってとても重要であるが、短期的な救済としか考えられておらず、場当たり的な対応にしかならないのも事実だ。なお、野党「ウダル」のクリチコ党首は、ウクライナでは現在「政権交代」を図っている最中だとして、中国指導部に大統領と会談しないよう求める声明を発表していた。

政権側も平和的解決を模索

 抗議行動は、デモのみならず、市庁舎や労働組合会館の一部占拠、内閣府や中央銀行の封鎖、欧州を目指した人間の鎖、ロック演奏、レーニン像破壊など様々な形で行なわれてきた。

 政権側は、反政府集会を強制排除したり、抵抗が激しい者を一時拘束したり、野党事務所を捜索したりするなど、強い姿勢で対抗し、負傷者も多数出ている。そして、そのような政権側の対応がまたデモ隊側の怒りを刺激するのだ。デモ隊は一部でブルドーザーを使い、治安部隊のバリケードを破壊するなど、デモ隊も過激化していった。政権側はこの動きを「クーデター」とさえ呼んでいる。

 だが、負傷者などの被害が増える中、欧米諸国からのウクライナ政府への批判が高まり、政権側も平和的解決を模索するようになった。そのため、12月2日には、最高会議の委員会が野党提出の内閣不信任案を本会議で審議することを決定したものの、3日の採決では与党系が過半数を占める議会で賛成票は半数に届かず否決された。ただ、与党・地域党議員2人が離党し、大統領府長官も辞表を提出し大統領に受理を拒否されるなど、与党側も動揺していった。また、ヤヌコービッチは2日にバローゾ欧州委員長に電話し、AAに関して議論するため代表団を欧州委に送る考えも伝えた。

 キエフの裁判所は12月1日から来年1月7日まで、市中心部での大規模集会を禁止する決定を下したが、野党側はこれを無視するのみならず、「広場を明け渡さないようデモを3交代で24時間続ける」と決定し、逆に治安部隊が広場から撤退する状況になった。


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