2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月13日

 こうした兵器を衛星や無人機で撮影した画像で確認するのは難しい。そこで、コストがかかる上に確実ではないが、工場を出た時点からスパイによって監視することが必要になってくる。この面で実績を挙げているのはイスラエルで、例えば、今年1月、5月、7月に空爆によってシリア内でロシア製とイラン製のミサイルを破壊している。

 日本は、中国や北朝鮮国内のミサイルの位置確認のための光学衛星やレーダー衛星は持っているが、北朝鮮がテポドン運搬兼発射台を9基から約50基に増やしており、人間による諜報活動がもっと必要だ、と日本の専門家は指摘している。

 他方、軍事情報機関から得た洞察や知見を基に、自国の防衛産業が新兵器を開発してくれれば、敵の兵器に対する最善の対抗手段になるだけでなく、他国への新兵器の販売促進に役立つことにもなろう、と述べています。

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 この論評は、正鵠を射ていると思われます。ロシアは旧ソ連時代を通じて、超高速であったり、超長射程であるなど、西側世界の兵器開発とは一味違った「ゲームチェンジャー」としての能力追求に努力を集中してきました。今でもその点では大きなインパクトを与え続けていますが、一方で、総合的な兵器体系という意味では、信頼性に欠け、稼働率の低い欠陥兵器である場合が少なくありません。

 いずれにせよ、ロシアのみならず、世界での新型の兵器開発について、その動向を正確に把握することは、わが国の防衛を全うするために必要不可欠ですが、現状、日本自身の軍事情報収集や分析能力は十分とは言えません。とりわけ、わが国の隣国中国や北朝鮮の兵器開発を含む軍事動向について、日本の情報収集体制は必要かつ十分とは言えず、そのほとんどを米国に(場合によっては韓国にさえ)頼っていると言っても過言ではありません。それは、日米安保同盟体制をより相互補完的なものとするには重大な障害です。従って、各種の防衛情報収集衛星、無人偵察機など、情報収集のための防衛力整備を十分に行う必要があります。

 しかし、それだけでは十分ではなく、普通の国並みに、人的諜報(HUMMINT)にも十分な目配りを働かせる必要があります。折から安倍政権下、国家安全保障会議(JNSC)創設に伴う、国家としての情報収集、分析体制の強化が期待できます。この際、防衛駐在官の駐在国の増加や増員、商社などの持つ軍事面での海外情報の活用体制の強化など、安倍政権には、国家の総力を挙げて軍事情報の収集に関し、普通の国並みに、大幅な改善を進めるようイニシアティブを発揮することを望みます。

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