そして22年には熊本県のForequeの「FIL」が、世界三大工業デザイン賞の一つであるiFデザインアワードを受賞した。空間デザイナーの木下陽介氏が手がけ、家具というより居住空間の一部としての椅子とテーブルをデザインしたという。
海外に活路を求めた家具メーカーがいずれも重視したのはデザインである。その努力の甲斐あって、欧米の有名家具メーカーに見劣りしなくなった。実際に海外のデザイン・コンペに出展し受賞することも増えている。
木材供給の問題
とはいえ、家具に消費される木材の量はわずか。しかも日本製と言っても、肝心の素材が国産材とは限らない。家具によく使われるのは広葉樹材だが、日本の広葉樹材は供給環境が整っていない。そのため外材に頼りがちだ。
しかし、近年は海外でも広葉樹材資源は枯渇しつつある。とくにウォールナットやチークなど家具に向いた樹種は伐採禁止や輸出禁止の動きが広がってきた。
これからは国産広葉樹材の供給に力を入れるとともに、スギやヒノキなど日本に大量にある針葉樹材による家具生産も課題となるだろう。
先に紹介した「FIL」シリーズは地元(南小国町)の小国杉にこだわって家具づくりを行っている。また北海道の中川町は、町内の広大な天然林から計画的に広葉樹を伐りだして近隣の旭川市の家具メーカー数社に提供している。宮崎県の諸塚村は、家具の企画会社ワイスワイスと提携して、シイタケ原木の中で太くなりすぎた木を利用して家具をつくる試みを進めている。ほかにも従来は木工に向かないと雑木扱いされたコナラやクヌギ材を使った家具づくりに挑戦している工房も増えてきた。
市場は家具だけではない
一方で家具にこだわらない木工品に目を向ける動きもある。
家具木工メーカーとして有名なオークヴィレッジの人と雑木林を歩いたことがあるが、太い広葉樹を見かけると「このヤマザクラは、2メートルの丸太が5本は取れる」「このクリなら、真ん中で割って挽いて広げたらテーブルの天板にもってこい」「コナラは乾燥が難しいけど、硬い心材部分を使うと椅子の脚にできる」「このハリギリだったら器を200個ぐらい挽ける」……と次々と計算されていた。平均すると1本の雑木から10万~20万円ぐらいの純益の得られる木工品が生産できるという。
実際、木の食器やカトラリーは人気を呼んでいる。それどころか100万円する木製キャットタワーとか、20万円の木製イヤホンや木製高級スピーカー……など、木製ゆえに高級とされる分野が広がっている。