図2は、労働時間、労働時間当たりの名目賃金、労働時間当たりの実質賃金の推移を見たものである。まず、90年代の初期、労働時間が減少するとともに時給が上がっているのが分かる。ところが、しばらくして図1で見たように雇用が減少した。時給は名目で低下傾向、実質では停滞となった。
時給は増えたが、雇用が増加しないので、総賃金(賃金×雇用者数)が増えないので需要が伸びず物価も上昇しなかった。こうして、長い停滞が続く。
ところが、13年の異次元緩和の開始以来、時給は名目でも実質でも上昇するようになった(14年の実質賃金の低下は消費税増税に、21年からの低下は原油と食糧価格の高騰による)。ただし、労働時間は減少したままである。これは新たな雇用が、高齢者や女性のものなので、長時間働くことが難しいからだ。
韓国と日本の教訓
韓国の経験から言えば、物価と実質GDPの上昇トレンドが高い場合は、最低賃金を無理矢理引き上げても、そのショックは時間とともに軽減する。日本の90年代初期の経験から言えば、物価と実質GDPの上昇トレンドが低い場合は、賃金の無理やりの引き上げは危険である。
つまり、今の日本において、各党が掲げるような最賃を「1500円に」というのは、危険をはらむ。最賃を上げるのなら、先に挙げた3つの問題への対応が必要である。