人口減少=人間の生息域縮小
野生動物とどう共存するか?
こうした〝不安情報〟に接するばかりでは、クマは「駆除すべきもの」だと考えがちになる。
ただ、先述したニュースの結論で使われる用語もそうだが、そもそも「駆除」という概念は正しいのか。それは、人間側の都合でしかないのではないか。また、「本来、山が棲み処であるはずのクマが、なぜ人間の生活圏に出没するようになっているのか」という〝根本原因〟を我々は見落としてはいないだろうか。
出没する理由は様々ある。代表的なものとして、ドングリ類の大凶作などが挙げられるが、そればかりではない。人里にある放棄果樹や人間由来のごみもクマの誘引物となる。
捕獲にあたるハンターの高齢化も著しく、半数以上が60代という状況も深刻だ。野生動物管理に関して、データなどをもとに科学的な知見を持つ行政職員の育成も急務である。
もう一つ、大きな理由がある。「人口減少」だ。人口増加局面では、野生動物の生息域に人間の生活圏が広がっていったが、これからは逆に人間の生息域が縮小する時代に入る。
それは、人間がクマをはじめとする野生動物を「押し返してきた」時代から、野生動物に「押し戻される」時代の到来を意味する。
人口減少に伴い、現状では「人手不足」や「地方消滅」の危機が叫ばれているが、これからは「野生動物とどう生きていくのか」という観点も考えていかなければならない。
つまり、クマだけを悪者にしても問題は解決しないのだ。
我々は〝人間側の課題〟にも真摯に向き合い、自分事として対応を考える必要がある。こうした状況に対して、対策の必要性は見えているのに問題を先送りし続けるという「日本的なやり方」では、将来、人間側が大きな代償を払うことになるだろう。「令和のクマ騒動」が人間に問うているものとはいったい何か、読者の皆様と考えたい。