2025年3月14日(金)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年1月22日

〝異例〟の顔ぶれ

 就任式は議会議事堂の丸屋根の下、ロタンダと言われる広間で、メラニア夫人が傍らで聖書をもち、ジョン・ロバーツ最高裁長官によって執り行われた。その様子は、屋内で行われたことを除けば例年と変わらないように見えたが、参列者の顔ぶれが多少異なっていた。

 過去の大統領経験者、立法府、司法などの代表といった通常の列席者の加えて、外国政府の代表も参加していた。通例ではワシントン駐在の各国大使が出席するが、今回は、イタリアのメローニ首相やアルゼンチンのミレイ大統領ら国家元首級が出席した初めての就任式となった。

 習近平国家主席が招待された中国は、習主席は欠席したものの、代わりに韓正国家副主席を出席させた。日本も岩屋毅外相を出席させており、いずれも、駐米大使を出席させるという通常とはかなり異なった扱いとなった。ここにもトランプの機嫌を損ねないようにという配慮が見て取れる。

 メタのマーク・ザッカーバーグ、アマゾンのジェフ・ベゾス、グーグルのサンダー・ピチャイ、アップルのティム・クック、OpenAIのサム・アルトマンら世界を代表する米国のIT企業を率いる世界有数の富裕な人々が、顔を揃えたのも異様であった。彼らは必ずしもトランプと政治的考えが一致するわけではない。なぜ、出席したかの理由については、とにかくトランプを敵に回してはまずいという考えがあるのではないかというのがもっぱらの見解である。

 メタが最近ファクトチェックを廃止したことも関連しているのかもしれない。もちろん、X(旧Twitter)のオーナーで政権入りが約束されているイーロン・マスクの姿もあった。

 大統領経験者のほとんどは、夫人をつれての参加であったが、オバマ元大統領のミシェル夫人だけは欠席だった。また、下院のナンシー・ペロシ元議長の姿もなかった。ただ、トランプは、2021年のバイデンの就任式に、選挙に敗れた現職大統領も出席することになっているにも関わらず、150年ぶりとなる欠席をしたので文句も言えないだろう。仏頂面でフランクリン・ルーズベルトの就任式に出席したフーバー元大統領は、欠席してもいいのだと知ったらどう思うだろうか。

演説冒頭の「黄金時代」の意味とは

 トランプの就任演説は、これから米国の「黄金時代」が来るという言葉から始まった。米国人が「黄金時代」と聞いて思い出すのは、「金メッキ時代」という言葉である。

 これは19世紀後半の米国が急速に発展し世界で一番豊かな国になっていく過程で、多くの成金が生まれ、拝金主義が蔓延した時代のことを、作家のマーク・トウェインが共著で、外側は輝いているが中身は空っぽという意味をこめて揶揄した言葉である。それを受けてトランプは、中身も黄金の真の輝かしい時代がくると言いたいのかもしれない。


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