2025年3月14日(金)

日本人なら知っておきたい近現代史の焦点

2025年1月22日

 一通り紹介し終わると、トランプは語り始めた。ベネズエラで最近犯罪率が減ったらしいが、それは犯罪者が米国に来たからだと移民政策の重要性を訴えた。関税が自分の辞書の中で一番美しい言葉と言ったことに関して、一番は「神」、二番は「宗教」、三番は「愛」、「関税」は四番目だと「訂正」した。私利私欲にまみれ、女性問題で有罪判決を受けたトランプが、神や愛を語ること自体おかしいと思う人もいただろうが、関税だけは多くの人が同意するところだろう。

 世界が環境のことを考え、化石燃料に頼らない方向に舵を切っていたのに対し、トランプは風力発電の機械は中国製だし、鳥が死ぬと述べて、化石燃料の重要性を訴えた。内容は基本的には就任演説と同じであった。

 演説を終えると、演壇の横に用意された机で、トランプはおもむろに大統領令に対する署名を観衆の面前で始めた。横についた人が、これはパリ協定破棄の大統領令です、などと中身を読み上げ、トランプがサインしてそれを皆に見せると歓声が沸き起こった。

 最後には、サインに用いたペンを、観衆に投げ入れ、人々は自分の方に投げてくれと熱狂した。さながら、大リーグで選手がボールを観客席に投げ入れるがごとくであった。

トランプの「黄金時代」は誰かの「暗黒時代」

 このように異例なことの多い就任式からトランプ政権の二期目は始まった。この熱狂が収まった時、どのような米国が立ち現れるのだろうか。「黄金時代」は本当に来るのだろうか。

 ただ、「明白な運命」という言葉の下で国民の士気が上がった19世紀に比べて、21世紀の社会は遥かに複雑で多様であり、人々が思い描く「黄金時代」はそれぞれ異なっている。トランプが思い描くのは白人男性が世の中の中心であった20世紀後半以前の米国かもしれないが、多くの人はもうそこには戻れないところまで来てしまったと気がついている。

 トランプとその支持者の「黄金時代」は誰かの「暗黒時代」を意味するかもしれない。トウェインが存命なら、このトランプの時代をみてどう表現するのだろうか。

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