2025年3月18日(火)

Wedge REPORT

2025年2月13日

 日本の古い地層の調査から、縄文時代も現在と同等レベルのスギ花粉が飛散していたとする推測もある。縄文人が花粉症だったかどうかはともかく、日本人はスギとともに生きてきたのだ。現在の花粉症増加は、生活環境の変化によって人体が花粉に過剰反応を起こすようになったと考える方が理に適っているのではなかろうか。

防護策や治療法開発へシフトを

 通常、疫病対策は、まず感染しないよう病原から遠ざかることで防御を進め、次に治療法・治療薬の開発が行われる。そして予防策がとられる。コロナ禍も、まずマスク着用、人的接触の抑制などを行い感染しないように努め、次に有効な治療法や特効薬の研究が行われ、ワクチンの開発へと進んだ。

 新型コロナウイルスを駆逐しろ、とは誰も言わなかった。当たり前だ。不可能だからだ。

スギの雄花。花粉症対策はスギを「無くすこと」ではない(筆者提供)

 ところがスギ花粉症の場合は、治療薬やワクチンの開発よりスギを伐れ、という声が高まる。しかし、冷静に考えるとスギ花粉を飛ばなくするのは不可能なのだ。

 改めて対策を考えると、森林を変えるには長期間かかりコストも膨大だ。その結果が望んだどおりになる保証もない。やはり花粉に接触しない防護手段の強化、治療薬やワクチンの開発、そして生活環境の改善に力点を移すべきだろう。

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