減反廃止で世界の
食料安全保障に貢献できる
コメの貿易は小麦などとは異なる。貿易量は5500万トンで小麦の3分の1。米国やカナダなどの小麦の輸出国は先進国である上、生産量の半分を輸出に向けている。これに対し、インドやベトナムなどの米輸出国は近年、目覚ましい経済発展を遂げる一方で、内実は貧しい消費者を抱える途上国である。国際価格が上昇すると輸出が増え国内供給量が減少するうえ国内価格も上昇する。貧しい国民は食べられなくなるため、08年、23年のインドのように輸出制限を行いがちであるうえ、輸出量は生産量の1割程度なのでわずかな生産減少で輸出は大きく減少する。コメ貿易は極めて不安定である。
「平成のコメ騒動」の際、日本は当時1500万トンの国際市場のところ、260万トンものコメを買い付けたため、国際価格は2倍に高騰して途上国の消費者を苦しめた。逆に、日本が減反を廃止して1000万トンのコメを輸出すると、世界の食料安全保障に貢献できる。
輸出推進を言うと、ジャポニカ米の国際市場は小さいなどの消極論が輸出を推進している農水省から出される。しかし、日本の自動車メーカーが北米市場を開拓しようとしたときに、日本車のシェアが小さいとしてあきらめたのだろうか?コメでも新潟の一若手生産者が台湾市場を独力で開拓している。できない理由ばかり挙げて仕事をしないという役所的な対応はやめた方がよい。
農水省は、日本の25倍の1億6000万トンもの消費量がある中国の米市場の4割がジャポニカ米になっていることを知らないようだ。中国では、ジャポニカ米の消費はほとんどなかったのに、電子炊飯器が日本から普及してから、ジャポニカ米の消費・生産はこの15年ほどの間にシェアを増やしている。
中国での1キロ・グラム当たりの価格は、インディカ米3~9元、ジャポニカ米5~10元、中国産あきたこまち13~15元、日本米100元(1元=17円)である(『農業経営者』21年8月号)。さらに、パックご飯で輸出すれば関税はかからない。
中国だけではない。小麦以上にコメの貿易量は拡大している。スシやかつ丼などの日本食が海外で定着・普及している。日本食の拡大とともに、日本産米への需要は高まる。
しかし、コメ輸出に携わる業者が指摘する最大の輸出阻害要因は価格だ。「令和のコメ騒動」で21年は1俵あたり1万3000円だった米価が2万5000円まで上昇した。テレビ新潟は、輸出している農家グループが台湾の業者に価格引き上げを申し入れたところ取引を停止されたと報じている。商売をしたことがない農水省が理解しなければならないことは、輸出を振興するには価格競争力を持たなければならないということだ。減反を廃止しなければ、価格は下がらず輸出は増えない。逆に、2万円の関税を払ってでも日本にコメを輸入しようとする動きもある。
外交の要諦は「敵を減らして友を増やす」ことだ。コメの輸出により、日本が世界から「求められる国」「必要とされる国」になれば、日本に対する軍事的な攻撃をした国は世界中、特にグローバルサウスからの批判を受けるだろう。そうした意味で、減反の廃止とコメ輸出は平時にも有事にも有効に機能する。ソフトパワーによる安全保障でもある。