2025年4月11日(金)

プーチンのロシア

2025年2月27日

 ウクライナで比較的大きな埋蔵量が確認されている資源の一つに、チタンがある。チタンはウクライナで実際に商業的な採掘が行われており、世界生産の7%ほどを占めている。

 ただ、それが意味するのは、すでに利益享受者が存在するという事実である。ウクライナ政府は24年10月、同国最大のチタン採掘会社である「合同鉱山化学会社」(ドニプロペトロウシク州、ジトーミル州などで操業)の株式100%を、アゼルバイジャン人が経営する会社に売却している。このほか、ベルタ社、グループDF社といった民間企業も権益を有する。よもや、開発権を民間企業から没収して、米国に差し出すわけにはいくまい。

 そもそも、チタンはレアメタルの一つとはされているが、実はありふれた物質であり、肝となるのは製錬や加工技術である。資源自体が大争奪戦になるような性格のものではない。

 また、ウクライナでは電子機器に欠かせないタンタル、ニオブも生産されているが、チタンの副産物としての小規模な生産に留まる。他方、合金などに用いられるベリリウムは、ジトーミル州に鉱床が存在し、まだ開発には至っていないものの、一応有望であるとされる。

トランプが飽きて立ち消えに?

 以上見てきたように、ウクライナにレアアース、レアメタル資源があり、さらに言えば石油・ガスを含め様々な鉱物資源が存在することは、事実である。しかし、世界の主要産地に比べれば埋蔵量はだいぶ見劣りし、開発条件の難しさゆえに採算がとれるかが微妙である場合が多い。鉄鉱石、マンガン、チタンなど、商業的に成り立つものは、すでに民間企業が操業し、既得権益となっている。

 最新の情報によれば、ゼレンスキー大統領の訪米で、鉱物に関する協定に署名する方向となっているようである。ただ、大急ぎで協定をこしらえること自体は可能かもしれないが、米国側が実際にウクライナの資源状況を精査すれば、実は目ぼしいものはなく、トランプが主張する5000億ドル回収など夢物語であることが明らかになるのではないか。鳴り物入りで調印したとしても、実際の成果は挙がらず、本件はフェイドアウトしていく気がしてならない。

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