トランプ政権は速やかに方針を転換する必要がある。さもなければ、貪欲な中国がその空白を埋めるために介入し、ラテンアメリカにおける米国の永続的な衰退を招く恐れがある。
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中南米の権威主義的支配者に対する贈り物
上記論説の指摘・懸念には同意できる点が多い。今回トランプ政権が中南米を対象にした一連の措置は、過去30年の間に起こった中南米における中国の存在感増大、米国の存在感低下を一層加速する恐れがある。
この1カ月半の間で、それなりに成果が上がりつつあるのは、①不法移民の入国阻止・強制送還、②現在、香港企業が掌握しているパナマ運河の港の運営権等についてである。措置をとる正当性は認められるも、手法は中国と同じ「経済的威圧」と「威嚇」であり、今や米国を含め世界の大国全てが、自国の国益を前面に出して他国との関係を進める「弱肉強食の時代」に入ったことを象徴している。
メキシコ移民とフェンタニル流入を阻止するためにメキシコとカナダの製品に25%の関税を課すことについては、逆効果を生む可能性があるとの指摘がある。具体的には、トランプ政権が高関税を課せば、メキシコへの投資は大幅に減少し、メキシコ経済は大きな打撃を受ける。その結果、失業率が上昇して、国境を越えようとする人が増えるか、または麻薬組織の仲間入りをしようとする人が増加する恐れが高い。
メキシコ側は国境管理強化、中国製品への関税賦課等を提案していると報じられ、両国が交渉を通じて合意点を見出し、25%関税が回避されることが望まれる。
国際開発局(USAID)の解体に関しては、対外援助停止は多くの中南米諸国にとっても非常に深刻な問題である。2月23日、トランプ政権は、①USAIDの全職員約1万人の内、少なくとも1600人の雇用削減に踏み切ること、②また、一部の役職を除き、国内外の全職員を休職とし、USAIDのオフィスは今後税関・国境取締局(CBR)が使うことが報じられ、抜本的見直しは確実である。