海外展開の武器となる
次世代光通信基盤「IOWN」
NTTの海外戦略で有力な武器と期待されるのが次世代光通信基盤の「IOWN(イノベーティブ・オプティカル&ワイヤレス・ネットワーク)」だ。超高速大容量、超低遅延、超低消費電力というIOWNの光通信技術「APN(オール・フォトニクス・ネットワーク)」を使えば、データセンターを地価の安い、エネルギー条件のよい遠隔地に配置したり、AI向けGPU(画像処理半導体)データセンターを共同利用したりすることが可能になるからだ。
NTTの海外進出を後押しするため国会でもNTT法が改正された。NTTはこれまで国内企業を育成するため研究開発成果を開示する義務を負っていたが、海外企業との協業に向け、秘密契約を結べるよう開示義務が廃止された。また外国人を取締役に迎えられるようになり、今回の人事で外国人を一人登用した。NTTの固定通信だけに課されていたユニバーサルサービス義務についても複数企業で支える形となる。いずれもNTTが再統合をにらみ政府に粘り強く要望してきたことだ。
KDDIやソフトバンク、楽天のライバル3社は今もNTTの再統合は日本の通信市場の公正な競争環境を阻害しかねないと主張している。NTTは再統合という念願がかなった今こそ、こうしたライバル3社の声にも耳を傾け、よりオープンな姿勢で競争に臨む必要がある。
またNTTが統合しても、国際競争力が増し、世界のデータセンターなどに同社の光技術が広まらなければ意味がない。NTTはIOWNを推進する国際組織「IOWNグローバルフォーラム」を立ち上げ、世界の通信会社や通信機器メーカーなど約160社・団体の仲間づくりに成功したが、国内ではソフトバンクが名を連ねていない。国内勢をまとめあげていく努力も必要だろう。
NTTの経営陣は今回の再統合を機に海外展開や情報通信産業の進展に一層力を注ぐ責務を負ったことを自覚する必要がある。多額のコストをかけて再び大企業病に陥るようなら「元の木阿弥」でしかない。特にIOWNは日本の情報通信産業にとって最大・最後のチャンスだけに、再統合を機にNTTグループ全社員の目を外に向けさせ、新技術や国際市場に挑戦していってほしい。

