2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年7月24日

テスラはインドで売れるのか?

 インドは、中国、米国、日本に次ぐ世界4位の自動車販売台数の国だ。24年の販売台数は428万台だが、ほぼ人口が同じ中国の3144万台とは、まだ大きな開きがある。昨年のメーカー別の販売台数1位は、日本のスズキの子会社マルチ・スズキ、2位は韓国ヒュンダイ、3位はインドの財閥タタと続く(表-1)。

 売れ筋車種の価格は、マルチ・スズキのスイフトが65万から96万ルピー(112万から165万円)、タタのSUVネクシオンが80万から156万ルピー(138万から268万円)、ヒュンダイのSUVクレタが111万から205万ルピー(191万から353万円)だ。

 インドのEV市場は小さく、24年の全販売台数に占めるシェアは、2.5%。EVの大半は国内で製造されており、生産台数は12万5000台だった。販売1位の中国MG(破綻した英国のMGを中国上海汽車‐SAICが買収したので、今は中国メーカー)のインド生産車、ウィンザーEVの価格は、140万から183万ルピー(241万から315万円)だ。

 2万ドルを超える価格のEVがEV市場に占めるシェアは6.6%とされ販売台数は1万台に届かないが、テスラはこの市場で競争することになる。

 テスラのモデルYのインドでの価格は、539万から739万ルピー(927万から1270万円)。米国の販売価格、4万5000から6万ドル(670万から900万円)との比較ではかなり高く、「世界一モデルYが高い市場」と報じられた。

米印の自動車への課税策

 価格が高い理由のひとつは関税だ。インドは自国産業保護のため輸入車に対し60%から100%の関税を課している。

 例えば、トヨタのベルファイアのインドでの価格は、1220万から1320万ルピー(2100万から2270万円)。メルセデスのGLSの価格は、1340万から1390万ルピー(2300万から2390万円)になる。レクサスLXの価格は2840万ルピー(4900万円)からだ。

 一方、インド政府は30年にEV比率を30%にする目標を持っており、EVへの関税に対し優遇策を導入している。

 3年以内にインド内の現地生産への投資を約束したメーカーの3万5000ドルを超えるEVについては、関税を15%に引き下げている。今回のテスラYが対象になっているかは分かっていない。

 テスラは、政府目標に沿いさらに関税の引き下げ、充電設備の充実などEV支援策が導入され、富裕層に販売の機会が増すとみているのだろう。

 しかし、米印間では、追加関税の交渉が継続中だし、加えて7月14日にトランプ大統領は、ロシアがウクライナとの停戦に50日以内に合意しない場合には、ロシアから石油、天然ガスを輸入している国に100%の2次関税を課すと発表した。

 ロシアは、化石燃料の輸出に依存する経済なので、化石燃料の販売収入を減少させ戦争の継続を難しくさせる狙いだ。2次関税の対象国になれば、米国向け輸出品に100%の関税を課す構想と理解される。


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