2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年7月24日

 米国に輸入される自動車と部品への25%への関税により、既にインドの自動車部品業界は大きな打撃を受けている。米国向け23年の自動車部品輸出額は15億ドル(2250億円)だった。さらに2次関税が課せられると影響は甚大だ。

 2次関税の詳細と対象国は不明だが、インドと中国が対象とトランプ大統領の周辺からは聞こえてきている。

誰がロシアの石油を買っているのか?

 ロシアのウクライナ侵攻前の2021年、ロシアは世界一の原油と石油製品の輸出国だった。原油ではサウジアラビアに次ぐ2位、石油製品も米国に次ぐ2位だったが、両方を合わせると年間4億トンを超える輸出量を誇る世界一だった。

 化石燃料は、ロシアの輸出額のほぼ3分の2を占め、天然ガスと石油の輸出収入はロシアの国家歳入の3分の1を支える。中でも原油と石油製品の輸出による収入がもっとも大きい。

 このロシアの輸出相手国は、22年2月のウクライナ侵攻により大きく変化した。欧州委員会(EC)、主要7カ国(G7)などがロシアの戦費獲得を防ぐためロシア産化石燃料輸入量の削減に乗り出したからだ。

 欧州連合(EU)は、パイプラインにより供給されている天然ガスを米国、中東などからの液化天然ガス(LNG)により置き換え削減を進める一方、22年12月にロシア産原油の東欧諸国向けパイプラインによる輸入を除き、海上輸送による購入を禁止した。

 制裁の実効性の担保を目的に、ロシアに対し制裁を課さない国の石油の購入によるロシアの収入を減らすため、石油に上限価格を設定し、上限価格以上での購入に対しては、欧米諸国とG7は輸送と保険などの提供を禁止した。

 当初の上限価格は、1バレル当たり60ドルに設定された。ロシアは対抗手段として船舶の確保に乗り出し、船籍、船名なども変更し、ロシア産原油を輸送する船舶を確保した。影の船団と呼ばれるその船の数は300隻と言われる。

 影の船団も使い、欧州に代わりロシア産原油と石油製品の購入に乗り出したのは、インドと中国だった(図-2)。

 インドと中国が23年1月から今年7月中旬までの2年半の間にロシアに化石燃料代金として支払った額は、それぞれ1190憶ユーロ(20兆円)と1970億ユーロ(30兆円)。両国だけで、ロシアの化石燃料輸出額の半分以上を支払っている(図-3)。

 今年6月のロシアからの化石燃料輸入代金は、インド45億ユーロ(7700億円)、中国54億ユーロ(9200億円)だ。両国を初め多くの国がロシア産化石燃料を購入する理由は市場価格を下回っているからだ。

 インドとトルコはロシアから購入した原油をガソリンなどの石油製品に精製し、欧州諸国に輸出している。サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの産油国は、ロシアから石油製品を輸入し自国の消費に当て、自国製品を輸出していると報じられている。

 トランプ大統領は、このロシアに資金が渡る状況に危機感を覚えたのか、中国とインドを念頭に100%の2次関税案を提案した。


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