また、環境問題を理由にして、自動車向けの炭素繊維使用を原則禁止する検討を始めたが、これは軽量化に不可欠な素材であり、航空宇宙産業など他の分野でも広く使われていることから、産業界から激しい反対が起こり、見直しの検討が始まった。
最大のつまずきが、「Farm to Fork戦略」の軌道修正である。これはEUの気候変動対策「欧州グリーンディール」の一部であり、農薬の使用量を半減し、農地の4%を休耕地とするなどの規制を含むのだが、食料安全保障への懸念と、農民の大規模な抗議活動により、見直しに追い込まれた。
今後は「どこが規制されるか」が焦点
PFAS問題の核心は、「予防原則」と社会の機能維持との間に、いかなる妥協点を見出すかにある。すでに「全面禁止」という最悪のシナリオは回避された。しかし、それは反対運動の先頭に立っている産業界の全面的な勝利を意味するものではない。
当初の「一括規制案」は、その後の広範な意見募集を経て、より現実的な「選別と管理」へと軌道修正されただけである。今後の焦点は「禁止の是非」ではなく、「どの用途を禁止し、どの用途に猶予期間を与え、どの用途に存続を許すのか」という、極めて厳しい意見対立がある分別作業へと移行している。
