2025年12月31日(水)

Wedge REPORT

2025年12月11日

専門職配置の成果と限界

 不登校を含む生徒指導上の課題に対して、行政が「何もしてこなかった」わけではない。平成期以降、心理的な側面からの支援を担うスクールカウンセラー(SC)や、生活環境・社会資源の側面から支援を行うスクールソーシャルワーカー(SSW)の配置など多様な支援策が実施されてきた。ただ、統計が示す通り、こうした専門職配置だけで不登校数の増加傾向を反転させるまでには至っていない。

 言い換えれば、個々の事例への介入だけでは吸収しきれない構造的圧力が強まっているとも解釈できる。

「登校だけを目標にしない」への政策転換

 不登校の長期的な増加を背景に、国はついに方針の転換を図っていく。

 16年に成立した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)は、子どもの学びは学校への登校だけに限定されるべきではないという考え方を背景に、多様な学びを支えるための制度的な土台を整えた。

 翌17年には同法に基づく「基本指針」が示され、「登校という結果のみを目標にしない」とする支援方針が明文化され、不登校支援の新しい方向性が明確に示された。

 23年には「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策COCOLO-PLAN」が策定された。

 その3本柱は、1. 不登校児童生徒すべての学びの場の確保、2. 心の小さなSOSを見逃さない「チーム学校」による支援、3. 学校風土の「見える化」と改善、である。ここで一貫しているのは「学びの断絶をつくらない」という視点である。

 COCOLO-PLANは決して「学校不要論」ではなく、学校を核とした多様な学びのネットワーク構築を志向する政策である点を押さえておきたい。

校内教育支援センター「学校≠授業」の象徴

 こうした政策転換が具体化した象徴的な取り組みが、校内教育支援センターである。これは、COCOLO-PLANに掲げられた「すべての不登校児童生徒の学びの場の確保」を、各学校の中で具現化しようとするもので、「授業復帰のみを前提としない学びの拠点」として位置づけられている点に特徴がある。

 従来も、いわゆる「保健室登校」など、教室とは別の場で過ごす形態は存在した。しかし、それらはあくまで「教室に戻るための一時的なステップ」とされることが多かった。

 これに対して校内教育支援センターは、教室とは異なる学びの常設拠点として設計されており、「学校=一斉授業の場」という従来の前提に対して、「学校=多様な学びを束ねるハブ」へと役割を拡大する機能を担いつつある。ここに、「学校の存在意義」の再定義の萌芽を見ることができる。


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