また、日本が国際安全保障でより多くの役割を果たそうとする動きについて私は評価したい。アジアの抑止力を強化するうえで、日本の存在は重要であり、トランプ氏がこの日本の努力を阻むような方向へ向かわないことを強く願う。
科学的リーダーシップを
損なう危機
米国国内に目を向けると、現在の右派が大学に背を向け、大学を「リベラルの牙城」と見なして攻撃する姿勢は「国家にとっての損失」である。米国の大学は世界の才能を引きつけ、イノベーションの中心となり、米国そのものの優位性を作り出した巨大な資産である。これを政治的理由で弱体化させるのは愚策に他ならない。
とはいえ、大学側にも反省すべき点がある。エリート大学はしばしば過度な進歩主義に傾き、複雑でセンシティブな言語規範を押しつけ、伝統的な価値観を持つ市民を疎外してきた。また、保守派や宗教的信念を持つ学生・教員が歓迎されていないと感じる環境を生んでしまったことは確かである。
これらは大学自身にとっても、社会にとっても損失であった。しかし、こうした問題の解決策は大学を攻撃し、外国人学生や研究者の受け入れを制限することではなく、大学内部の改善によって包摂性を高めることである。研究資金の削減はさらに深刻だ。ハーバード大学などの主要研究機関では、削減された予算がガン研究や心臓病研究、アルツハイマー病研究など、人類に大きく貢献する可能性のある領域に向けられていた。これらが失われることは「直接的に人命に関わる」問題であり、米国の科学的リーダーシップを損なう危険な措置である。
さらに民主主義が徐々に弱体化していることも事実である。米議会が、大統領の権限に対して抑制力を発揮できていない現状を憂慮すべきだ。特に共和党議員の多くはトランプ氏を批判すれば中間選挙での報復を恐れ、大統領の権限を監視するという本来の役割を果たしていない。
司法についても、地方裁判所や巡回裁判所は時にトランプ氏の行動に対抗してきたものの、最高裁判所は政権の強硬で違法性が疑われる行動を実質的に容認する判断を下すことが多かった。
このように、制度的な抑制力が弱まっている現在、最終的な抑制装置となるのは「世論」だ。トランプ氏の人気が経済悪化の影響などでさらに低下すれば、共和党議員が彼に距離を置く可能性も出てくるだろう。
移民政策も重要なイシューである。トランプ政権の強硬な移民政策は、家族分離、長期滞在者の強制送還、米国内に家庭を持つ移民の拘束など、「残酷かつ非合理的」で、これらの政策は、人道的に問題があるだけでなく、労働力不足を招き経済に悪影響を及ぼしている。
