2026年1月20日(火)

トランプ・パワー

2026年1月20日

 さらに出生数が減少する中、強制送還が人口の自然増加を上回る可能性があり、米国が実際に人口減少に転じる恐れすらある。また、私のようなリベラル派が移民流入についての国民の懸念を十分理解してこなかったことも、トランプ現象を生んだ原因である。

かつての独裁者に
類似する姿勢

 トランプ氏の「戦争嫌い」については、軍事介入に慎重である点で評価したいが、現実的な判断を欠く側面がある。ガザ紛争においては、ネタニヤフ首相に圧力をかけ、停戦合意に向けた行動を促した点は評価したい。

 しかしウクライナに関しては、ロシア寄りの解決策をウクライナに押し付けようとしており、侵略者を利する危険な提案である。また軍事介入を避けたいという姿勢と、ベネズエラ情勢で予測される行動との整合性について、私は疑問視している。

 日本の高市早苗首相は昨年10月の日米首脳会談でトランプ氏をノーベル平和賞候補に推薦する意向を伝えたが、受賞の可能性はないだろう。

 私はこれまで多数の独裁者を取材してきたが、彼らの多くは自己陶酔的で、周囲のイエスマンに褒めそやされ、ノーベル賞を欲しがる傾向があった。トランプ氏の姿勢はそれと酷似しており、道化師のように見える。

 トランプ氏に対する私の総合的な評価は極めて低く、「米国史上、最悪の大統領」としてその名が刻まれる可能性はすこぶる高いと思う。唯一評価できる点を挙げるならば、ガザ停戦への働きかけと欧州諸国の軍事支出増加を促したことだけである。それ以外の内政・外交のほぼ全てが失敗だったからだ。

 ただし、規範を破壊しながらも短期的には成果を挙げることで、「規則ではなく力が正義である」かのような誤ったメッセージを世界に与えた点は危険であり、「破壊的な大統領」であるといえるだろう。

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Wedge 2026年2月号より
世界を揺さぶるトランプ・パワー
世界を揺さぶるトランプ・パワー

1月3日、トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、ベネズエラに対する攻撃を成功させ、マドゥロ大統領を拘束したと発信し、世界に衝撃を与えた。自らを「平和の使者」と称していたトランプ氏だが、戦火の口火を切った格好だ。トランプ氏にとっては、犯罪者を拘束するための法執行をしたにすぎないという認識なのだろうが、議会の承認を得ていないほか、国際法に違反しているという指摘もある。 独裁者を追放するという帰結と、そのプロセスは別に考えなければならない。そうでなければ、「力による現状変更を容認しない」という、戦後80年かけて世界が営々と築き上げてきた共通認識を崩したロシアを誰も批判できなくなる。 そもそも、トランプ氏は積み上げられてきた「ポリティカル・コレクトネス」を否定し、ルールを決めるのは自分だと言わんばかりの行動をとってきた。まさに「トランプ・パワー」である。 そんなトランプ氏を大統領に再度選んだ、現在の米国の政治経済、外交、そして思想などをつぶさに見ていくと、我々が知っているかつての米国から大きく変貌していることが分かる。 それでも米国が日本にとって重要な同盟国にあることに変わりはない。米国とどう向き合っていくのか。世界だけではなく、日本こそ問われている。


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