なぜ「世界の中の日本」に言及せぬ?
首相の政治姿勢を論じるのが本稿の目的ではないので、有権者の判断に委ねるとして、首相会見で気になったのは、外交についての時間がわずかだったことだ。
中国の威圧行動への警戒、非難は当然として、拉致問題解決への意欲、「自由で開かれたインド太平洋」構想(FOIP)の深化、安全保障3文書の改訂などに触れたが、将来を見据えた大きなテーマ、日本が世界でどんな国を目指すのか、経済大国の復活か、政治大国、福祉大国かについてはほとんど伝わってこなかった。
1月21日に発表された自民党の政策集にもそうしたプランはみられない。就任会見で語っていた「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」はどこに行ってしまったのか。それらを聞きたかった国民は少なくあるまい。
海外、対米、対中関係のリスク注視
昨今、世界における日本の存在感の低下は誰の目にも明らかだ。日本自身が最も感じていることだろう。
合計9年近くに及んだ安倍晋三政権時代は、国力に余力があった時代でもあり、主要7カ国首脳会議(G7サミット)での米欧の論争の仲介など一定の役割を果たすことが可能だった。「FOIP」も安倍氏の提唱だった。
岸田文雄政権は、ロシアによるウクライナ侵略が始まった当初、ヘルメット、防弾チョッキなど戦闘関連の装備品をウクライナに供与、各国と協調して在京ロシア大使館員のうち8人もの多数を一挙に国外追放するなど、従来よりも踏み込んだ強硬策を実行した。予算の問題などで息切れしてしまったが、地雷除去装置、技術支援など効果的な協力は続いている。
今回の高市首相の衆院解散・総選挙について米紙ニューヨーク・タイムズは「首相は政策を前進させるどころか、より弱い存在になるリスクを抱えている」という日本政治専門家の懸念を紹介(1月19日電子版)。「高市首相は中国によるレアアース輸出規制とトランプ政権による日米関係の不確実さに対処しなければならない」とも論評(20日電子版)し、英BBCも同様に、日中、日米関係の困難さを伝えた。
