2026年1月29日(木)

Wedge REPORT

2026年1月29日

 「地域の価値創造装置」という考えの日本全体にとっての示唆は明確である。これからの観光政策・観光経営において問われるのは、「どれだけ呼び込めたか」ではなく、「どのような関係が残ったか」である。

 観光KPIを人数・消費額中心から、関係性・学習・再訪・共創といった中長期指標へと拡張する必要がある。短期的な経済効果だけでなく、地域社会にどのような変化が生じたのかを測定する視点が不可欠となる。

 さらには、観光を地域政策、教育政策、産業政策と切り離して考えないことである。観光は、一次産業、文化、福祉、教育、人材政策と接続されて初めて、持続的な価値創造装置となる。縦割り行政の枠を超えた設計が求められる。

 そして、全国一律モデルからの脱却である。都市と地方、成熟地域と過疎地域では、観光に期待される役割は異なる。重要なのは、それぞれの地域が自らの文脈に応じた「価値ポートフォリオ」を描くことだ。

 4000万人時代の日本観光は、量的拡大の次のフェーズに入った。観光を通じて何を再生し、何を次世代につなぐのか。観光を「地域の価値創造装置」として再設計できるかどうかが、日本社会の持続可能性そのものを左右する段階に来ている。

ポートフォリオ型観光戦略への転換を

 これから必要なのは、「どこから来るか」ではなく、「どの価値構造を形成するか」という視点である。短期消費型と長期滞在型、都市集中型と地方分散型、体験型と意味・変容型、高消費型と高関係性型――これらをどう組み合わせるかが、地域ごとの成長戦略となる。

 東京や大阪は短期高消費型、地方は長期・変容型といった役割分担も考えられる。観光は全国一律モデルではなく、地域別戦略産業として再設計されるべき段階に来ている。

 4000万人時代の日本観光に求められているのは、さらなる「数」ではない。価値の構造を設計し直す、知的かつ戦略的な転換なのである。

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