2026年2月25日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年2月25日

 電子商取引(EC)大手アリババグループは18年に参入。QRコード型の入れ墨、声紋認識を使った個体管理、AIカメラによる豚の行動データの把握と健康分析、赤ちゃん豚の悲鳴認識などのソリューションを打ち出した。

 通信機器・端末大手のファーウェイは21年にスマート養豚ソリューションを発表した。AIカメラによる顔認証・画像認証、豚に付けた無線タグによって、養豚場への不審な車両や人員の出入りを監視する。

中国重慶市の国家豚ビッグデータセンターで、スマート養豚場の状況をリアルタイム表示するスクリーン(China News Service /gettyimages)

 従業員が消毒をさぼっていないか、野良猫やネズミ、鳥の侵入を検知する。豚一頭一頭に付けた無線タグで体温や運動データを個別に記録するなどの機能がある。他に、検索大手バイドゥやEC大手JDドットコムなど、IT大手は軒並み参入したと言っても過言ではない。

 中国政府はデジタルチャイナ戦略を打ち出し、あらゆる分野の産業昇級(産業アップデグレード)、産業数字化(産業デジタル化)を推進してきた。畜産も例外ではない。

大資本が零細農民に勝てない理由

 養豚の産業アップグレード戦略には疫病という追い風もあった。18年から20年にかけてのアフリカ豚熱の流行だ。

 この病気は、豚に対して極めて高い致死率を持つ。感染した豚の多くは数日以内に死亡し、有効なワクチンや治療法も長らく存在しなかった。このため、発生した場合には感染拡大を防ぐため、周辺の豚も含めて殺処分するしかない。

 中国は世界最大の豚肉生産国であり、飼育頭数も膨大である。感染拡大を完全に封じ込めることは困難であり、数千万頭以上の豚が失われたと推計されている。

 アフリカ豚熱流行により零細農家はリスクを恐れて養豚をとりやめ、供給は大きく減少。豚肉価格は一時、前年比で倍近くまで上昇し、消費者物価指数全体を押し上げる要因となった。また、厳格な防疫体制が必要となった。

 豚肉価格の上昇と防疫体制の重要性は大規模投資に踏み切る理由となった。スマート養豚ソリューションの普及と養豚ビルの建設が、アフリカ豚熱流行下で進んだことは決して偶然ではない。

 見た目のインパクトの大きさもあって、養豚の技術革命は高い注目を集めてきた。しかし、本当に持続可能なビジネスなのか、疑う声もあった。筆者もその一人だ。なぜならば、中国は過去に養豚の大規模化に取り組んできたが、何度も失敗してきたからだ。


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