第2に、主要政策としてあげられている10項目の概要をみる。25年と比べて上位5項目(内需拡大、現代化産業体系、科学技術・イノベーション、改革、対外開放)には変更がないが、下位では項目が若干変更されたほか、「民生」(25年9位)が7位に格上げされ、「重点分野リスクの解消」(同6位)が10位に繰り下がっている。すべての項目に触れる紙数はないが、ポイントは下記の通りである(数字は項目にふられたもの)。
(1)内需拡大・強大な国内市場建設:従来のモノの消費喚起策のほか、「サービス消費」への期待が示されている。25年1月には『サービス消費の新たな成長点の育成加速に関する工作方案』が公表され、サービス消費振興の具体施策が先行して示されている。国内市場建設については(4)で詳述されている。
(2)現代化産業体系構築・新たな原動力の育成:新たな原動力としては、「新興産業」、「未来産業」、「サービス業」が指定されており、「AI+」(AI応用による産業の高度化)が強調されている。
(3)ハイレベルの科学技術の自立自強の加速:重点は、科学技術による産業のレベルアップに置かれている。基礎研究の重視、「教育・科学技術・人材の発展を一体的に推進」の項目が示すように人材育成のウエイトが上昇している。
(4)経済体制改革の深化:全国統一大市場の建設が最重視され、「全国統一大市場建設条例」の制定が予告されている。市場統一の障壁となっている各地方レベルの規定・方式の是正・撤廃が「改革」の目標とされている。
(5)ハイレベルの対外開放拡大:「一帯一路」共同建設の質の高い発展などの従来方針に加え、自主的開放の項目として、付加価値通信、バイオテクノロジー、100%外資病院などの分野の開放があげられている。
(8)民生の保障・改善への注力:大学新卒者への就業支援の踏み込んだ実施を求めている。公共サービスの質向上や社会保障体系の整備につき具体的な支援策を明記している。
(10)重点分野の安全保障・リスク解消:リスク分野として不動産市場があげられている。ただし、新規増加規制、在庫解消、供給の最適化、在庫住宅の保障型住宅への転換など、従来施策が記されているのみで新味はない。政府活動報告でもそうであったが、当面は不動産市場の安定化で手一杯ということではないか。
26年の実質成長率は減速か
成長率目標は引き下げられたが、これまでの中国経済では、新規5カ年計画の第1年目は高成長となる傾向があった。これは、計画に盛り込まれた投資が一斉にスタートするためであり、現に政府活動報告も26年度計画も「実際の取り組みにおいてより良い結果が得られるよう努める」としている。また、上掲表に示した財政赤字額とその対GDP比が達成されるとすると26年のGDP成長率(名目)は5%を超えるとの推算も成り立つ。
一方で、政府は「一般物価水準をマイナスからプラスに転じさせる」(デフレ克服)目標を掲げており、投資の抑制・効率化に努めるはずである。また、これまで経済を下支えしてきた輸出も従来より鈍化するであろう。こうした要素を考慮すると、26年の実質成長率は、4%台に減速することが見込まれる。
イランを始め中東地域の戦火が世界経済に及ぼす影響が拡大している。その荒波の中、中国経済が「新しい質の発展」を遂げることができるかどうかに注目していきたい。
