「モジタバ政権は攻撃で弱体化はしたが、核開発を推進するという『決意』はより強固なものになった。核の抑止力がなければ侵略され続ける。核兵器を保有する以外に道はないと思い極めたようだ」(中東専門家)。モジタバ師はファトワを撤回し、“ルビコン河”を渡ったのだ。
イランは昨年6月の「12日間戦争」まで濃縮度60%の濃縮ウランを440キロ保有していたが、これは核爆弾約10個を製造するに相当する量といわれる。イスラエルのネタニヤフ首相はこの濃縮ウランがどこにあるか知っているとしているが、イラン側は攻撃前に他に移したと主張しており、隠匿場所は不明。
核兵器開発を加速させるという見方が強まったことで、ハメネイ師を抹殺したのは誤りだったとの分析も出ている。同師は超えてはならない「レッドライン」を明確にし、政権内部の強硬派と穏健派のバランスを絶妙に取っていた。なによりも革命防衛隊を抑えることが可能だった。しかしモジタバ師は防衛隊の「操り人形」(ネタニヤフ氏)で、何をやるのか分からないからだ。
主導権を握っているのはイラン
米中央軍によると、米軍はこれまでにイランの軍事基地など6000カ所以上を空爆、イラン海軍の艦船100隻以上を破壊した。イスラエルもドローン基地など250カ所以上を攻撃、5000発を超える爆弾を投下したとしている。さらにトランプ大統領はイランの主要な石油積み出し基地であるカーグ島を爆撃したと表明、これまで手を出してこなかった石油インフラにも攻撃を拡大させた。
人的損害もイラン側が飛びぬけて多く、小学生160人がミサイル攻撃で犠牲になったのをはじめ民間人約1400人が殺害された。レバノンでもイスラエルの空爆で約900人が死亡し、深刻な人道危機になっている。
軍事的には制空権を掌握する米国とイスラエルがイランを圧倒しているのは事実だ。しかし「主導権を握っているのはイラン」(中東専門家)と言える。なぜならイランは石油の大動脈であるホルムズ海峡を「機雷を敷設」(CNN)したり、石油タンカーを攻撃したりで事実上封鎖し続けており、世界経済の帰すうを左右できているからだ。
いわばホルムズ海峡を人質にし、世界経済を道連れにする戦略だ。捨て身になったイランは強い。
人口1億人の大国であり、過去にも8年間続いたイラン・イラク戦争にも耐えた実績がある。地雷原を「神は偉大なり」と叫んでオートバイで突入した「狂信性」も健在だ。革命防衛隊は戦争を利用して逆に自らの組織をしっかり固めた。
軍事力に劣るイランは米軍基地のある対岸のペルシャ湾岸諸国に攻撃の矛先を向け、戦火を拡大させる作戦だ。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビア、バーレーン、カタール、クウエートなどの石油施設をも標的とし、大量生産できる自爆ドローン攻撃を激化。湾岸諸国を巻き添えにし「イラン攻撃は自分たちにも跳ね返ってくる」ことを思い知らせようとしている。
そればかりかイラクでもイランが援助している民兵組織「カタエブ・ヒズボラ」が米大使館にロケット弾を発射、大使館が一時炎上する騒ぎになった。米国はバグダッド在住の米国人に退避を勧告。すでに中東各国に滞在する米国人に対し、退去勧告を出しており、ほぼ全域で米国人の脱出が続いている。
