現行法上、戦時下の民間船舶防護はできない
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害するなど2月28日に勃発した米・イスラエルによるイラン攻撃から3週間余りが経過した。この間、イランは報復として、石油と液化天然ガス輸送の大動脈であるペルシャ湾を航行するタンカーを攻撃し、機雷の敷設を宣告するなど世界経済を“人質”に取って応戦している。
この事態にトランプ氏は3月14日、自身のSNSで「多くの国々は海峡の航行と安全を確保するため、米国と連携して軍艦を派遣することになる」と投稿、「中国、フランス、日本、韓国、英国などが艦艇を派遣することを願う」とのメッセージを発信した。
高市氏は16日の参議院予算委員会で「法律の範囲内で検討中だ」と述べ、具体的な項目として、「機雷の除去」「民間船舶の防護」「他国軍への協力」「現行の情報収集活動の拡大」を挙げている。しかし、自衛隊を派遣する根拠として、海上警備行動や米艦等の防護、海賊対処、警戒監視活動があるが、その多くは戦時下の活動を想定しておらず、しかも、イラン軍や精鋭軍事組織「革命防衛隊」といった「国または国に準じる組織」が相手方として想定される場合には、憲法等の制約によって派遣することは困難だ。つまり現行法上、派遣の目的である「タンカーなど日本関係船舶の防護」はできないということだ。
勝手にはじめた軍事作戦であっても……
今回、この問題を複雑にしているのは、米国とイスラエルが勝手にはじめた軍事作戦であるにも関わらず、どうして多くの国々が巻き込まれ、甚大な影響を被らなければならないのか――といった「怒り」が、国内はもとより世界中に蔓延していることだ。
その通りだからこそ、高市氏は首脳会談の冒頭、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ」とたたえたのだ。これは「1日も早く攻撃をやめ、平和を取り戻してほしい。それを決断できるのは、ドナルドあなただけだ」という停戦を促すメッセージにほかならない。
会談の直前、日英など6カ国が「ホルムズ海峡の安全航行を確保する」との共同声明を発表し、同海峡を事実上封鎖しているイランに対し「最も強い言葉で非難する」と強調したのも、海峡封鎖による被害の長期化を懸念し、停戦することができれば、航行の安全確保に向けて米国に協力するというメッセージだ。
こうした停戦に向けた各国の外交努力に期待したいが、それで日本関係船の防護を目的とする自衛隊艦艇の派遣問題が消えたわけではない。ホルムズ海峡の封鎖が継続されるなど混乱が長期化するケースや、仮に停戦が実現したとしても、革命防衛隊の一部やハマス、ヒズボラなど親イラン武装勢力による攻撃が続く可能性もあるだろう。そうした事態を想定した海上自衛隊の護衛艦や掃海艦艇の派遣を検討し、準備を急ぐ必要がある。
