メルツ首相のイラン戦争をめぐる態度は、一貫性を欠いている。米国とイスラエルのイラン攻撃開始直後には、「イランの核兵器開発は食い止めなくてはならない」と、トランプ政権の奇襲攻撃に対して一定の理解を示していたからだ。
これまでトランプ氏とメルツ氏は、比較的良好な関係を保っていた。それだけにトランプ氏は、ホルムズ海峡での護衛作戦をめぐって、メルツ氏がきっぱりと援助要請を断ったことにより、「裏切られた」と感じたに違いない。
またEUで外交問題を担当するカヤ・カラス外交安全保障上級代表も3月16日の記者会見で、「米国のイラン戦争は、欧州の戦争ではない。我々はこの戦争に加わるつもりはない」と述べ、戦争継続中にホルムズ海峡での護衛・掃海任務などに加わる意志がないことを明らかにした。
ちなみにEUは2024年2月以来、紅海で、イエメンのテロ民兵組織フーシ派の攻撃から民間船舶を守るアスピデス作戦を実行している。ドイツやフランスなど10カ国のEU加盟国は、駆逐艦やフリゲート艦など4隻を出動させ、海域の警戒任務に就いている。フーシ派はイランの革命防衛隊によって、資金や兵器の援助を受けている。
これはEUが主導する数少ない軍事作戦の一つだ。だがカラス上級代表は、「我々はアスピデス作戦をホルムズ海峡での船舶護衛や掃海任務に拡大するつもりはない」と断言した。
トランプ氏の「NATOカード」
トランプ氏は3月17日にホワイトハウスで「NATO加盟国は、愚かな過ちを犯している」と述べた。彼はインターネット上のプラットフォーム「Truth Social」で、「NATOはいつも一方通行だ。私はいつもそう思っていた。米国は毎年数10億ドルの金をかけて彼らを防衛しているのに、彼らは我々が必要とする時には守ってくれない」と怒りをぶちまけた。(ただし、この主張は正確ではない。2001年に米国でアルカイダによる同時多発テロが発生した時、NATOは大西洋条約第5条を発動して、ドイツなど多数の加盟国がアフガニスタンに派兵して米軍の対テロ戦争を支援した)
トランプ氏は、3月15日に英国のファイナンシャル・タイムズ紙が掲載したインタビューの中で、「ホルムズ海峡を利用している国々は、たとえば掃海艇を送るなどして、この海峡の通行がスムーズに行われるように支援措置を行うべきだ。我々は欧州諸国に対して、ウクライナ支援などを通じて協力してきた。NATO加盟国が私の要請を無視したり、拒否したりした場合、それはNATOの将来にとって非常に悪いことだ」と述べている。
欧州の論壇では、トランプ氏のこれらの発言は、欧州諸国がホルムズ海峡での作戦に貢献しない場合には、米国がウクライナ支援を停止したり、NATOから脱退したりする可能性を示唆したものと解釈されている。トランプ氏は、NATO脱退やウクライナ支援停止をちらつかせることによって、欧州諸国がホルムズ海峡でのタンカー護衛や掃海任務に参加するように圧力をかけているのだ。
