2026年3月24日(火)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年3月24日

 トランプ氏は、ホルムズ海峡問題を、友好国の忠誠度を測るリトマス試験紙と見なしている。トランプ氏は、「日本はNATOよりも良い同盟国だ」とも述べている。

 高市首相がワシントンでトランプ氏に何を約束したのかは、公表されていない。しかしトランプ氏は、「日本の方が欧州よりも前向きだった」と言うことで、NATOに圧力をかけるために日本を使っている。

 「他社が言ってきた条件は、おたくの条件よりずっと良かったですなあ」と言うのは、ビジネスの交渉でよく使われる方法である。ディール好きの元実業家トランプ氏らしい交渉術だ。

ドイツは「イラン戦争後の貢献」に含み

 さすがにメルツ首相も、トランプ氏の激しい反応に不安を抱いたのか、トーンを和らげた。3月18日にドイツ連邦議会で行った演説の中で、「もしも条件や法的枠組みが整えば、我々はイラン戦争終結後に、ホルムズ海峡での船舶航行の安全確保などに関する議論に背を向けるものではない」と述べた。

 もちろんドイツが「戦闘継続中にホルムズ海峡での船舶護衛などに貢献する気はない」と言っていることに変わりはない。メルツ氏は、ワシントンに向けて投げる貢献拒否の言葉をオブラートに包んだだけだ。

 欧州諸国にとって、米国のNATO脱退やウクライナ支援停止は、最悪のシナリオだ。ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)は、3月19日付の社説で、「トランプに、NATOを脱退する口実を与えてはいけない。米国が求める掃海艇をホルムズ海峡に送ることは、NATO崩壊を防ぐためには最低限のコストだ」と指摘し、ドイツ政府に柔軟な対応を求めている。

 昨年以来、欧米間の連帯を揺るがす出来事が立て続けに起きている。それは、25年2月のミュンヘン安全保障会議での、米国のJDバンス副大統領の辛辣な欧州批判、米国のスティーブ・ウィトコフ特使らがウクライナ停戦交渉で見せた、ロシア政府の権益を重んじる交渉態度、「米国によるグリーンランド併合にデンマークが反対する場合には、武力行使も辞さない」と一時主張したトランプ氏の態度、今年1月に米軍が国際法を無視してベネズエラを攻撃し、大統領夫妻を米国に連行したことなどである。

 これらの出来事により、欧州の米国に対する疎外感は強まる一方だ。ホルムズ海峡での船舶護衛・掃海任務をめぐる対立も、欧米間の亀裂を一段と深めるに違いない。NATOの漂流の行き先は、どこになるのだろうか。

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