2026年4月2日(木)

WEDGE REPORT

2026年4月2日

 三木谷氏はさらに「楽天経済圏」を「Rakuten Ecosystem」と英語で名付け、同社が展開するポイントサービスや映像配信サービスの「Rakuten TV」、メッセージサービスの「Viber(バイバー)」といった通信以外の様々なサービスの仕組みを海外の通信事業者に提供していく計画を発表した。仮想化技術についてはドイツの新興通信事業者、1&1(ワン・アンド・ワン)を筆頭に「70社以上が採用に動いている」と述べ、楽天グループのグローバル事業展開に一層力を注ぐ構えを示した。

「Rakuten Ecosystem」の外部提供を発表する楽天の三木谷社長

 実はMWCを主催しているのは第2世代通信規格「GSM」を普及するためにスタートした国際業界団体の「GSMA」(英国)で、中核となる理事のメンバーには主に世界の有力通信会社のトップが名を連ねている。基調講演についても大手の通信会社や通信機器メーカーのトップが務めることが多かったが、今回はスペースXや楽天など「業界外」からの登壇が目立ったことも大きな特徴だった。

生成AIの活用が通信分野でも重要なテーマに

 生成AIの「ChatGPT」の登場に伴うAIブームの広がりを受け、MWCでも通信分野へのAIの活用が重要なテーマとなっている。GSMAが今年掲げたメインテーマは「The IQ Era(知能の時代)」で、「ConnectAI(コネクトエーアイ)」「AI Nexus(AIの結合)」など6つ掲げた重要テーマのうち、4つがAIに関するものだった。AIの利用可能性を探る段階から、AIをいかに社会基盤に組み込み、収益化するかという新たなフェーズに移ったのも今回の特徴といえる。

 AIの技術をロボットなど現実世界に活用する「フィジカルAI」を推進している米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)が昨年10月、フィンランドの大手通信機器メーカー、ノキアに出資したのを受け、ノキアではその成果を踏まえた技術を展示していた。AIで携帯通信の無線ネットワーク(RAN)を高機能化する「AI-RAN(エーアイ・ラン)」だ。

 生成AIを動かすデータセンターと無線ネットワークはこれまで別個に存在してきたが、両者を一体化し、基地局の通信機能を自動で制御する一方、基地局に搭載した高性能な画像処理半導体(GPU)をネットワークでつなぎ、仮想のAIデータセンターにしてしまおうという試みである。

 AI-RANには主に3つの役割を期待している。AIを使って無線ネットワークを賢くする「AI for RAN」、基地局をエッジAIサーバーとして活用する「AI on RAN」、基地局の演算処理能力を通信事業者以外にも貸し出す「AI and RAN」と呼ばれるものだ。

 ノキアはエヌビディアのGPUを基地局に採用することで、ネットワーク構成の最適化やアンテナの指向性の調整などに活用しようとしているが、そこで余ったGPUの演算処理能力を外部に貸し出す共同実験をソフトバンクと進めている。

 具体的には、エヌビディアのGPU上にエッジAIサーバーとRANを仮想的に共存させ、通信の需要に応じてGPUの演算処理能力をエッジAIと無線機能に自動で振り分ける。基地局に置かれたGPUを互いにつなぐことで分散型の仮想AIデータセンターを構築し、その演算処理能力を通信とAI処理の両方に活用しようというものだ。ソフトバンクではこうしたAI-RANソリューションを「AITRAS(アイトラス)」と名付けている。

 エヌビディアとソフトバンクはそうしたAI-RANの普及を目指そうと、ソフトバンク傘下の英半導体技術会社、Arm(アーム)を加えた3社を中心に24年のMWCで「AI-RAN Alliance(エーアイ・ラン・アライアンス)」と呼ばれる組織を結成した。現在は130社以上がメンバーとして参加している。

次世代無線基地局ネットワークを目指す団体「AI-RAN Alliance」のブース

 今回のMWCの会場にも同組織のブースが置かれ、米通信半導体大手のクアルコムや大手通信事業者の英ボーダフォン、韓国SKテレコムなどが新たに理事に加わったことを明らかにした。


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