2026年4月7日(火)

トランプ2.0

2026年4月7日

 エプスタインファイルの扱いを巡ってもボンディはトランプの不興を買っていた。第二次トランプ政権発足直後に、エプスタインの「顧客リスト」が「いま私の机の上にある」と発言したものの、後にそのようなリストは存在しないと述べるなどちぐはぐな対応が目立った。

 トランプは、エプスタインファイルの公開を求めるMAGA=Make America Great Again(再び偉大なアメリカを)派に気を遣って、ファイルの公開を支持すると発言する一方で、自分絡みの文書がファイル内に多数存在するために、公開されない方が望ましいという気持ちを滲み出させるなど、二律背反する態度をとったため、ボンディも翻弄され混乱したようにも見えた。

一貫していた忠誠心

 ただ、不手際が目立つ一方で、ボンディがトランプへの忠誠心を一貫して示し続けたのも事実である。それが際立って表れたのが、2月11日の下院司法委員会の公聴会である。これは司法省がエプスタインファイルを数百万点追加公開したことを受けて開かれたものであった。

 加害者とされる人物の名前を黒塗りした一方で、被害者の身元保護を怠ったとして、「これはウォーターゲート事件よりも重大だ」と厳しく詰め寄る議員に、ボンディは必死に応戦した。そして、その過程で、トランプを「米国史上最も透明性の高い大統領だ」と讃えることを忘れなかった。

 また、トランプがエプスタインと共に出席したパーティーに未成年女性が同席していたかどうかを問われると、ボンディは、そのような質問を「馬鹿げている」とし、トランプが罪を犯したという証拠はないと擁護した。さらにトランプ政権下で司法省は信頼性を失ったと批判されると、ボンディはトランプのことを「アメリカ史上最高の大統領」と表現して弁護した。

 メディアの中には、このボンディの公聴会での言行は、トランプという一人の人間のための「パフォーマンス」に過ぎないと見なすものもあったが、その甲斐あってトランプは「すばらしかった」とボンディの対応を絶賛した。

 その後もボンディは忠誠心を示し続けた。それは、司法省のビルに、にらみをきかせるトランプの写真の巨大な垂れ幕が掲げられたことでも表されていた。そこには、トランプ政権の移民政策のキャッチコピーである「米国を再び安全に」と書かれていた。

 トランプは今回の解任に当たってボンディのことを「偉大な米国の愛国者で、‌忠実な友人」と表現し、「大規模な犯罪取り締まりを指揮し、素晴らしい仕事をした」と讃えた。ただ、本音としては、ワイルズ首席補佐官の「まったくの期待外れだった」という言葉に近い思いを抱いていたのではないだろうか。

司法長官という職責の特殊性

 就任以来一年強、不手際はありつつも司法長官として忠誠心を示し続けたボンディの仕事ぶりから今回の解任の意味を考えると、今後司法省を使ってより攻撃的にことを進めたいというトランプの意思が見えてくる。政敵に対しては、緻密な訴追によって追い詰め、エプスタインファイルに関しては、トランプの意図を正確に忖度し、非難をかわして絶対的に守る、そのような布陣を求めているようにみえる。

 そもそも閣僚の中でも国内で取り締まりを行うFBIなどを指揮下にもつ司法長官は、国内の政敵と戦う上では極めて重要なポジションである。司法省は、初代ワシントン大統領時代につくられた最も古い4つの省の内の一つであり、司法長官職は、法的な問題に関して大統領に助言するために「法に精通した」人物が任命されるとして1789年に創設された。


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