イランはホルムズ海峡の外側に、小規模の輸出用積み出し基地ジャスク・ターミナルを保有している。既に3月に大型タンカーを受け入れ輸出したと報じられた。
ジャスク・ターミナルへは1000キロメートルのパイプラインにより石油が輸送されるが、その積み出し能力は1日当たり35万バレルしかなく、カーグ島ターミナルの代替にはならない。原油の収入は大きく落ち込む。
米連邦準備制度理事会によると、イランの経常収支は黒字で、その額は国内総生産(GDP)の1.8%とされる。約60億ドルだ。
イランの輸出収入の約6割は石油だ。24年第4四半期の石油の輸出収入は約100億ドルだ。年間では数百億ドル。
石油の収入がなくなれば、たちまち経常収支は赤字になり、輸入にあてる資金が枯渇する。通貨の下落、高インフレを招き、イラン国民をさらなる苦しみに追いやることになる。
しかし、戦争が続くよりも短期間の高インフレの方が、国民にも望ましいのではないか。イランの政権は、原油収入を失えば兵器も思うように備えられない。政権は原油収入の減少に長くは耐えられない可能性が高い。
中国はイランからの原油の輸入が途絶すれば問題に直面するかもしれないが、13億バレルといわれる備蓄があるので、当面困ることはないだろう。
トランプはなぜ変わった
イランを「石器時代に戻す」と息巻いていたトランプは、なぜ戦闘から兵糧攻めに戦略を変えたのだろうか。国内のガソリン価格は当面上昇するが、ホルムズ海峡解決策の近道と考えたのだろう。
軍事的な攻撃を続けてもイランがホルムズ海峡を開放する気配は全くなく、脅しにもイランは屈しない。
イランの海峡を握る立場が、米国よりも交渉上有利なことに今頃気付いたというのが真相だろうか。兵糧攻め戦略が、早期のホルムズ海峡開放と原油価格の引き下げにつながるとの読みになったのだ。
結局、イラン以外の湾岸諸国は原油も石油製品も輸出できず、食料の輸入にも困る状況の中で、イランだけが原油を輸出し収入を得、食料も輸入できている。このイラン有利とも言える立場を変えるには、イランを石油も輸出できず、海上経由の食料の輸入も難しくさせる立場に追い込むしかないということだ。
戦争を続け、イランを追い込めば、さらに湾岸の他国の石油設備に対するミサイル、ドローン攻撃が激しくなり、ホルムズ海峡開放後の石油の供給に大きな影響を生じる可能性もある。それを考えると大規模な攻撃を続けることは難しいのだろう。
米国内でイランのインフラへの攻撃は戦争犯罪との声も大きくなっており、さすがのトランプ大統領も支持率が低迷する中で無理はできないと判断したのかもしれない。
さまざまな考えが巡った結果の判断だろうが、戦闘よりは望ましい戦術だ。ただ心配なのは、気まぐれなトランプ大統領なので、またすぐに気が変わり、カーグ島攻撃に舵を切ることだ。イランを兵糧攻めにし、その結果をまずみることを優先して欲しい。
