2026年5月20日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月20日

 この合意によりフィリピンは、「Pax Silica」と呼ばれる、アメリカおよび10カ国以上が昨年12月に発表した。サプライチェーンを確保しAIにおける中国の影響力に対抗するための国際的な連携に参加する最新の国となる。

 この合意はまた、フィリピン、日本、アメリカが協力して進める「ルソン経済回廊」イニシアティブの強化にも資する。このイニシアティブにより、スービック湾というルソン島の主要な商業港へのアクセスがより容易になり、輸送、クリーンエネルギー、半導体サプライチェーンなどの重要産業への投資が促進される。一部のアメリカ製造業者はすでに中国の供給網から切り離すため、ルソン経済回廊に工場を設立している。

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狙いは経済安全保障の強化

 上記の解説記事で紹介されている協定の主眼は経済安全保障の強化であり、とりわけ東南アジアで最も重要な同盟国であって南シナ海で中国と対峙するフィリピンは、米国にとってこの種の取り組みの自然な選択肢である。その対象としてもフィリピンが比較優位を有するニッケル等の鉱物資源や歴史的に関係の深い半導体産業が俎上に上っている。

 「パックスシリカ(Pax Silica)」は、昨年12月に米国が立ち上げた、同盟・パートナー国の経済安全保障上の連携のための枠組みであり、AIの進化により重要鉱物や関連インフラなどの需要が増加し、サプライチェーン再編が進むとの認識の下、敵対国への依存軽減や新技術の確保、といった領域での連携を目標としている。これまで日英豪等12カ国が参加しているが、今回の合意でフィリピンもこの枠組みに参加することになる。

「ルソン経済回廊」とは、2024年4月の日米比3カ国首脳会議において打ち出されたもので、ルソン島の物流を日米の支援で整備する構想である。具体的にはスービック港とマニラ、バタンガスを連結する鉄道や港湾などの整備支援が念頭にある。今回の米比合意とルソン経済回廊の間に相乗効果が生まれることが期待される。

フィリピンは海外の投資と技術を必要としており、またAIその他の先進技術に対するフィリピン人労働者のスキルアップのためにも、今回の米比合意の持つポテンシャルは大きい。
また近年、日比関係においては、従来からの経済貿易・経済協力に加えて、安全保障面での協力が格段に深化してきた中で(相互アクセス協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、政府安全保障支援(OSA)等)、共通の同盟国たる米国を軸とした協力が進むことは望ましく、今回の米比合意は我が国としても前向きに評価すべきものと考えられる。しかしながらいまだ詳細が明らかではなく、今後の米比間協議の帰趨によっては以下のような心配な側面もある。


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