初めてAfDの州首相が誕生?
AfDは昨年2月の連邦議会選挙で、得票率を前回(2021年)の選挙に比べて2倍に増やして20.8%を獲得し、第2党になった。特に旧東ドイツの5つの州全てで、AfDが首位に立った。旧東ドイツでは有権者の3分の1近くがAfDを選んだ。
今ドイツの政界で特に注目されている選挙が、9月6日に予定されている、旧東ドイツのザクセン・アンハルト州の州議会選挙だ。その理由は、この州でAfDの州首相が初めて誕生する可能性が強まっているからだ。
ドイツの世論調査機関INSAが今年5月13日に公表した政党支持率調査によると、AfDへの支持率は42%で首位だった。第二党のキリスト教民主同盟(CDU)との間には18ポイントもの差が開いていた。
保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)は、「ザクセン・アンハルト州議会選挙でAfDが43%の得票率を確保し、緑の党、自由民主党(FDP)などの得票率が5%に達せず、議席を取れない場合、AfDの議席数が過半数に達し、同党が単独政権を樹立できる」と報じた。この場合、ドイツで初めてAfDに属する州首相が誕生する。ドイツの連邦議会や州議会では、小党乱立を防ぐための「5%条項」によって、得票率が5%に満たない政党は会派として議席を持てない。
AfDの首相候補は、ウルリヒ・ジークムント(35歳)。室内用芳香剤を販売する企業の経営者で、14年にAfDザクセン・アンハルト州支部に加わった。16年にザクセン・アンハルト州議会議員に選ばれ、22年からは同議会のAfD会派の共同院内総務の一人である。
顔が米国の映画俳優ライアン・ゴスリングにやや似ており、TikTok(ティックトック)のフォロワー数は約50万人に達している。一部のメディアは、「ドイツの政治家としては、ティックトックで最も人気が高い人物」と評している。
「過去との対決」にも変化
ドイツは第二次世界大戦後、ナチスの犯罪を批判的に取り組む「過去との対決」を進めてきた。若者たちに歴史の授業でユダヤ人虐殺などの詳細を伝え、政府、経済界、学界が一体となって「自国の前の世代が加害者となったことの責任を心に刻む文化」を育んできた。
AfDには、過去との対決を否定し、ナチスの犯罪を矮小化する党員が少なくない他、ネオナチとの接点を持つ党員もいる。同党は、「ドイツはユーロ圏だけではなく欧州連合(EU)からも脱退するべきだ」と主張している。
「過去との対決」に力を入れてきた国で、なぜAfDに票を入れる有権者の数が増えているのだろうか。
最大の理由は、CDU・CSU、社会民主党(SPD)、緑の党などへの強い不満だ。前のオラーフ・ショルツ政権はSPD、緑の党、FDPの三党連立政権だったが、これらの政党は昨年の総選挙でいずれも大きく票を減らした。特にSPDと緑の党の難民政策、二酸化炭素(CO2)削減を重視する環境政策は、多くの市民から批判された。
