CDU・CSUは昨年の総選挙で、21年の総選挙に比べて得票率を2.4ポイントしか増やすことができず、目標としていた30%に達することができなかった。総選挙後、メルツ氏の人気は低下する一方だ。
「国に置き去りにされた」と感じる人々
なぜ旧東ドイツでは、AfDに対する支持率が特に高いのだろうか。筆者は25年9月、旧東ドイツ・テューリンゲン州イエナの「民主主義・市民社会研究所(IDZ)」で、アクセル・ザルハイザー所長に、旧東ドイツでAfDへの支持率が高い理由について尋ねた。同氏は旧東ドイツでの極右勢力の拡大を研究テーマの一つとしている。
ザルハイザーは、「AfDの躍進は、旧東ドイツ人の間で、連邦政府や伝統的政党、民主主義への信頼が失われたことの裏返しだ」と断言する。
同氏は、「旧東ドイツの一部の地域では、今も旧西ドイツへの人々の移住によって人口が減っている場所がある。そのような地域いわば限界集落では、特にAfDへの支持率が高い。病院や学校、託児所、公共交通機関などのインフラの劣化、将来に対する不安感、自分たちは政府に見捨てられているという不満感が、人々をAfDに走らせている」と語った。
人口が減っている地域では、スーパーマーケットや薬局などが閉鎖され、食料品や日用品を買うのも難しくなる。ザルハイザー所長がそのような過疎地域の例として挙げたのが、テューリンゲン州南部のゾンネベルク郡だ。
この郡で23年6月に行われた郡長(ラントラート)選挙では、AfDのロベルト・ゼッセルマン候補が52.8%の得票率を確保して郡長に就任した。AfDの党員が郡長の座に就いたのは、全国で初めてだった。
ザルハイザー所長は、「ゾンネベルク郡は、今なお人口流出が続いている地域の一つだ」と指摘する。テューリンゲン州統計局によると、ゾンネベルク郡の人口はドイツ統一直後の94年には7万1454人だったが、24年には5万4964人に減った。30年間で人口が23%、約1万6000人減ったことになる。多くの若者が、「ここにいても未来はない」と考えて、南隣のバイエルン州などに移住している。
旧東ドイツでは、「自分たちは政府から顧みられず、取り残されている」と感じる市民が増えている。このため彼らは「世直し」の希望をAfDに賭けているのだ。
ザルハイザーは、「ドイツ統一後の変化だけではなく、15年のシリア難民の流入、20年のコロナ禍、22年のウクライナ戦争とエネルギー危機など過去になかった様々な出来事が住民たちを不安に陥れた。多くの人々が、続発する地政学的な変化についていけなくなっている」と語る。
彼によると、多くの旧東ドイツ人たちは、「自分たちはドイツの中で二級市民つまり旧西ドイツ人に比べて劣った存在」と感じている。彼らは、連邦政府が外国からの難民を優先的に支援し、旧東ドイツ人の支援は二の次にされていると感じている。
つまり、国による支援を待つ人々の列の中で、旧東ドイツ人たちは「自分たちは外国人に比べて後ろの方に並ばされている」と感じているというのだ。「難民は我々よりも優遇されている」という社会的妬み(Sozialneid)の感情は、AfDにとって追い風となる。
