2026年5月28日(木)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年5月28日

 ザルハイザーによると、東西ドイツ統一以来の劇的な変化の中で翻弄され、連邦政府や伝統的政党への信頼感を失った人々が、AfDを支える岩盤支持層になっている。AfDはドイツの政党の中でソーシャルメディアを最も巧みに使っているので、多くの若者たちの心をつかむことにも成功している。

「過去との対決」の成果をAfDが侵食

 筆者はザルハイザーに対し、「ドイツは学校教育の場などで、若者たちにナチスの犯罪について詳しく教えて来た。AfDの幹部の中には、ナチスの犯罪を矮小化する者もいる。なぜ有権者たちは、このような党に票を投じるのだろうか」と尋ねた。

 ザルハイザーは、「優先順位の問題だ。旧東ドイツの人口減少地域に住む人たちにとっては、ナチスの過去の問題よりも、自分たちの将来を守り、地域を安定させることの方が重要だからだ」と指摘した。市民にとっては、ナチスの犯罪についての反省という抽象的な問題よりも、日常生活を改善することの方が大切なのだ。

著書「排外主義と闘うドイツ ~なぜ右翼ポピュリスト政党が台頭したのか~」(高文研)でも、ドイツの右翼ポピュリスト政党を躍進させた深層に迫っている

 同氏は「90年代のドイツ社会には極右政党に票を入れることを大っぴらに語れない雰囲気があった。ところが今日では、人々のためらいは減っている」と言う。

 ザルハイザーは「AfDはフランスやイタリアの右派ポピュリスト政党よりも過激だ。その理由は、AfDの党員の中には、他国の極右政党とは違って、ネオナチ勢力と結びつきを持つ者が少なくないからだ。さらにAfDは、フランスの右派ポピュリスト政党・国民連合(RN)などと異なり、『生物学的な人種差別主義』を重視している。つまり帰化した外国人をドイツ人とは認めず、ドイツ人の血を引く白人だけを、ドイツ人と見なす傾向だ」と指摘する。

 彼はインタビューの最後に、「残念なことにテューリンゲン州では、有権者がAfDを選ぶという行為が日常化しており、特異なことではなくなった。AfDは今後も、旧東ドイツで多くの市民の心をつかみ、支持率を増やすだろう。29年の連邦議会選挙では、AfDの得票率が25年の連邦議会選挙での得票率を上回る可能性がある」との予測を明らかにした。

 万一次の総選挙でAfDの得票率が首位になった場合、ドイツの国際的なイメージには深い傷がつく。ドイツ政府や経済界、学界はAfDの台頭に歯止めをかけることができるだろうか。

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