2026年5月29日(金)

Wedge REPORT

2026年5月29日

上がらない職員の給与

 そうした中で全国展開する事業者が増えているのだが、その運営実態はなかなか外部から見えにくい。売上高が非公開である場合がほとんどであり、非営利法人にしても学童運営セグメントでどれだけの収益を得ているかの情報にたどり着くのは容易ではない。

 公金である補助金がどのように学童運営に費消されているのか納税者が確認できない状況にある。もちろん好ましくない。

 学童でどれだけもうけを得られるのか。実態はなかなか見えないものの、こども家庭庁による子ども・子育て支援推進調査研究事業のうち、令和4年の「放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査」からその内幕が少しだけ見える。

 公立民営のNPO法人では年間収益2456万円に対して費用は2362万円、損益差額は94万円だ。一方で株式会社を含むとされるその他法人では年間収益2180万円に対して費用1895万円、損益差額は285万円となる。補助金が手厚い東京都内の施設なら損益差額は約870万円にもなる。

 学童保育1つで毎年約300万円の純利益が得られるなら1000単位なら30億円だ。しかも学童事業は他の業界と違って「外れ」がない。不人気商品や不人気サービスで顧客が波を引いたように消えることはなく、毎年春になると利用者が向こうからやってくるという、実に安定したビジネスだ。

 その損益差額はなぜ生み出せるのか。答えは非常に簡単で、支出の7、8割を占める人件費を抑えているからだ。この調査によると常勤職員の賞与込みの年間支給額として平均289万9910円となっている。額面で300万円に届かない。補助金は年々増えても職員の給与はさほど増えず、生じた損益差額が事業者の利益となる。

 疑問に思う人はインターネットで学童職員の求人を検索してみるといい。いまだに額面17万円程度の基本給で求人募集している民間事業者が多い。都心部でもせいぜい20万円台前半だ。

 公の学童施設で働いて低賃金に苦しむ「準官製ワーキングプア」と言える。学童業界は慢性的な人手不足だが、学童産業化の伸張がさらに人手不足に拍車をかけている。

自治体が運営事業者に求めるもの

 なぜ自治体は人件費を抑えて運営する広域展開事業者を選びがちになるのか。筆者の知り合いの自治体関係者は口をそろえて「学童の安定的な運営が必要だ」と話す。

 公事業ゆえ年度途中や受託期間、指定管理期間の間で「経営が苦しいから事業を断念します」となりそうな事業者は不適であるとする。「何より安定して運営できること」が学童運営において自治体が求めやすい「質」だ。

 運営学童数が多ければ「職員不足の時は他施設から職員を融通します」というアピールも自治体には安心材料となる。実際、埼玉県富士見市で今年4月から学童運営を始めた事業者は、必要な職員が確保できず各地から職員を臨時に呼び集めたという。


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