2026年5月29日(金)

Wedge REPORT

2026年5月29日

 そこには、保護者や職員が望む「子どもにとって安心できる学童」の姿は見えてこない。「事業継続による居場所の確保こそ最善の利益」と考える自治体側と「良い職員による優れた支援」を求める保護者や職員側との乖離は極めて大きい。そして自治体が学童運営を民間に求める限り、学童の産業化は続くことになる。

 学童保育の産業化は、「学童保育には何が必要か」という意識が学童保育に関わる人たちそれぞれに大きく違った内容を生み出してしまったことも筆者は問題と考えている。

民間事業者に求めたいこと

 学童保育の産業化のもう1つの局面である、民間事業者独自の学童保育運営にも言及しておこう。筆者は埼玉県が作成した「放課後児童クラブ民間事業者新規参入スタートブック」の編集作業を手がけ、埼玉県庁のHPで公開されている。編集作業で県庁側と完全に一致していたのが「民間参入する事業者が、子どものためにある放課後児童健全育成事業を確実に実施できること」だった。

 オプションのサービスはもちろんあってよいけれども、子どもの育ちを支える土台である放課後児童健全育成事業の本質――非認知能力を育てる育成支援―を履行してこそ学力支援や技芸能力の育成といった種々のサービスが光り輝くものであろうということだ。

 子どもにも保護者にも、そして学童で働きたいという人にとっても「選択肢」が増えることは望ましい。その点、事業運営に優れた手腕を持つ民間事業者が独自の理念で学童保育を展開することは歓迎だ。学習塾やスポーツクラブなどの事業者が事業の多角化として学童運営に進出を始めており、今後は建物等の資産を活用できるインフラ事業者の参入もありそうだ。

 アウトソーシングされている学童保育事業に対してはそのひずみが限界にあるだろう。補助金を学童保育運営の真水分として有効に使うことを半ば強制する施策、例えば一定水準以上の賃金を支払うことを義務付けるなどを厳格に定める姿勢を示すことも必要であろう。

 優れた職員が働きたいと思える賃金水準にし、職場環境を向上させることが子どもそして社会の最善の利益につながると筆者は強く訴えたい。

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