2026年6月26日(金)

World Energy Watch

2026年6月26日

米国は実質的に負けた

 米国の主要メディアの多くは米国が負けたとみているようだ。世界最大の軍事力を持つ米国が、数日で終わると見込んだ戦争の収束に100日以上費やし、まだ暫定段階の合意しか得られていない。

 軍事力で劣るイランは、自国製ドローンを武器に湾岸諸国の米軍基地や精油設備も攻撃し、ホルムズ海峡を封鎖した。ドローン攻撃を警戒した米国海軍は、ホルムズ海峡を通過する船舶の護衛もできないことを露見した。

 護衛を呼びかけられた同盟国も、米軍ができないことをできるはずもなく、結果として残ったのは、米国と同盟国間の亀裂だけだった。

 トランプ大統領の発言は揺れ動き、イランとの合意、ホルムズ海峡開放に関する矛盾する発言が何度も繰り返された。トランプ大統領と米国に対する同盟国の信頼は大きく傷ついた。

 イランが勝ち取ったものは大きい。世界はホルムズ海峡を持つイランの力を知った。14項目の暫定合意の中にイランに対する「すべての制裁の解除」、復興と経済開発を目的とした「3000億ドル(約48兆円)の資金調達」、「凍結資産の解除」が織り込まれている。詳細条件は交渉次第だが、イランは勝ち取ったと考えているだろう。

 米国内には、地上戦まで踏み込めば勝てたとの声もあるが、トランプ大統領は踏み込めなかった。地上戦になれば、イランの湾岸諸国へのドローン攻撃による被害に加え、米国経済と世論への悪影響も見込まれた。

支持を失ったトランプ政権

 米国の各種世論調査の結果をまとめているシルバーバレットによると、6月21日現在のトランプ大統領の支持率は39.1%、不支持率は57.8%だ。イランとの開戦直後3月2日の支持率は42.2%、不支持率は54.9%だったので、戦争は支持率を落とした。

 イラン戦争への支持は、開戦直後の35.1%から38.2%に3.1%上昇したが、不支持は47.3%から55.6%に8.3%増えている。開戦直後に意見がなかった人たちが反対に回ったようだ。

 背景には、米国の世帯の大きな支出項目であるガソリン価格の上昇がある(図-1)。開戦前1ガロン当たり3ドルを切っていたが、ピーク時には50%上場した。今は4ドルを切ったが、依然30%以上上昇したままだ。

 さらに軽油も大きく上昇したことでトラック輸送費が上がり、物価上昇を引き起こした。経済政策と物価に対する有権者の不満は高まっている。

 トランプ政権の経済政策に関する支持は、25年1月の政権発足直後には5割近くあったが、徐々に下がり、今年3月1日時点では39%、6月21日時点では34%になった。

 物価政策、インフレに対する不満も強く、開戦時の不満63%は6月21日時点では69%まで増えている。

 11月の中間選挙前にインフレに対処し支持率を上昇させるのに、まず必要なのはガソリン、軽油価格引き下げ。そのために必要なのはホルムズ海峡の開放だ。

 戦争の幕引きを図るには、米国の勝利を有権者に印象付ける必要があり、勝利したと主張できる内容「イランは核兵器を保有しない」に漕ぎつけるまで時間が必要だった。


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