ホルムズ危機の世界の影響は
24年の世界の原油、天然ガス液の生産量は、1日当たり9689万バレル、石炭液化品などを含む石油消費量は、1日当たり1億142万バレルだった。日本の消費量は324万バレル。世界の3%だ。
「バレル」は米国で石油生産が開始された時に輸送に利用された樽の容量からできた単位で159リットルだ。年間に世界は59億キロリットルの石油を消費している。比重を考慮すると、世界の石油の年間消費量は約50億トンだ。
1日当たりの世界の石油の消費量約1億バレルの内、1500万バレルの原油と500万バレルのナフサなどの石油製品がホルムズ海峡を通過していた。
米国エネルギー省エネルギー情報管理局(EIA)のデータは、今年3月以降消費量が生産量を上回っていることを示している。一部の消費国は備蓄を取り崩し対処していた(図-2)。
EIAは、ホルムズ危機の影響による中東諸国の原油生産量の減少を表‐1の通り推測している。暫定合意が終戦に結び付いた場合には、原油の生産は徐々に回復するが、完全に回復するには6カ月以上必要との見方が強い。
EIAは26年第4四半期の原油価格を1バレル当たり89ドル、27年平均価格を79ドルと予測している。戦争前の60ドルから70ドルのレンジを上回ったまま推移するとの予測だ。予測通りであれば、燃料価格の下落は限定的になる。
世界はどんな対策を取っているのか
イラン戦争開戦後ホルムズ海峡に代わる代替ルートの輸出はあったが、世界の原油生産量の約1割が流通しなくなり、原油価格は上昇した。ホルムズ海峡を通過していたLNG貿易量の2割が市場から消えたので、LNG価格も上昇した。
発電にも利用されるLNGの価格が上昇したので、アジア、欧州のいくつかの国は代替として石炭火力の利用率を上げた。当然石炭価格も上昇した(図-3)。
ホルムズ海峡経由の石油の供給途絶による燃料価格の上昇は、多くの国での消費者支援の政策導入を促した。国際エネルギー機関によると、燃料に関する税を引き下げた国が55カ国、燃料価格に上限を設定した国が日本を含め23カ国、直接補助金の支出が32カ国あり、政策の重なりを考慮すると、合計では92の国・地域が消費者支援策を導入した。
温暖化対策に熱心な国は化石燃料価格を課税により上昇させることにより、脱炭素を進める政策を取ってきた。例えばドイツだ。
ドイツ政府は、21年に燃料に対する炭素(CO2)税を導入した。欧州連合で実施されているCO2の排出量取引では現在カバーされていない輸送・暖房部門を対象にしている。
ガソリンには、エネルギー税が1リットル当たり65.45ユーロセント、CO2税が16セント課せられ、さらに19%の付加価値税も課せられている。
ドイツ政府は、原油価格の高騰を受け5月からエネルギー税を14.04ユーロセント引き下げた。付加価値税の減額を合わせると約17セント(約31円)の補助になる。
気候変動対策と一貫性のない政策は政権内部からも批判を受けたが、気候問題よりは、まず目の前にある生活と産業が大切ということだ。
ドイツ国民の関心も気候問題、climateから手頃な価格、affordabilityに移っている。政府も温暖化ファーストではなくなったようだ。
52の国と地域がエネルギー節約政策を導入した。大学などでのオンライン利用、公務員の出張制限、冷房温度の管理、公共交通機関の利用が主な政策だ。



