一方、ゴア州ではリゾートエリアには数多くのバーが並ぶ。筆者が在住するグルガオン(ハリヤナ州)や、以前住んでいたバンガロール(カルナータカ州)などの大都市では、酒屋は多く、お酒を提供するレストランやバーも豊富だ。
禁酒州の人口を全国平均に含めれば、消費率は当然下がる。しかし実際に市場として機能しているのは「飲める州」の都市部であり、そこには巨大な消費者層が存在している。
ちなみに、同じ「飲める州」でも酒税は大きく異なる。例えばゴアの酒税は最高小売価格(MRP)の49%だが、バンガロールがあるカルナータカは83%と大きな差があり、同じお酒でもゴアの方がかなり安く飲める(参考)。
タブーの根拠は「宗教」よりも「道徳観」
手に入りやすさ(Availability)とは別に、慣習(Custom)としての飲酒文化を見ると、インドの実像はさらに複雑だ。
調査によると、インドでアルコールを消費するのは成人男性の18.8%、女性はわずか1.3%にとどまる(参考)。
「なぜ飲まないのか」と複数のインド人に話を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。「宗教的な理由ではない」というのだ。
確かにヒンドゥー教が飲酒を積極的に推奨しているわけではないが、「教義に反しているから飲まない」という感覚の人は少数派のようだ。それよりも根強いのは、「だらしない」「暴力につながる」という昔からの社会的なイメージだ。
デリー在住の男性(43歳)は言う。「飲む人は、働かない、怠け者というイメージがあります。社会的な見え方として良くないんです」
デリー近郊の街ファリダーバード在住の男性(37歳)もこう語る。「村や小さな町では、男が酒を飲んで理性を失い、妻を叩いたりすることが多くあります。特にインドでは、飲酒が女性に対する無礼な振る舞いと結びつけられることがあります。だからインドでは、飲酒は悪いものと考えられてきたのです」
「飲んでいる」のに「飲んでいないこと」に
この文化的背景が生み出す、インド独特の飲酒パターンがある。
筆者がよく飲酒共にするインド人の40代男性は、両親と同居している。両親はお酒を飲むことをよく思わないそうで、「親に対しては飲んでいないことにしている」という。
家に酔った状態で帰ると、見た目や振る舞いで気付かれてしまうため、普段はあまりたくさんは飲めない。出張や旅行で親の目が届かない場所に行った時に、存分に飲む、というのが彼の実態だ。
インタビューした別の男性(34歳)も「今(一人暮らしなので)家で飲むこともあるが、両親と一緒に暮らしていた時はできなかった。今でも、飲んでいることを両親が知ったら叱られる」と話した。
