2026年7月28日(火)

トランプ2.0

2026年7月28日

常套手段としてのレッテル貼り――「民主党=共産主義」

 英誌エコノミストと大手世論調査会社ユーガブによる全国共同世論調査(2026年6月26~29日実施)によれば、「資本主義が社会主義よりもより良い経済システムである」と回答した米国民は44%で、5割を割っている(図表2)。18~29歳までの若者に至っては、その数字はさらに減り、31%で約3割になる。これは、驚くべき数字として注目されている。しかし、この兆候は確かにあった。

 筆者が、2018年中間選挙において出会った若者の話を紹介しよう。研究の一環として、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス候補(当時、民主党・東部ニューヨーク州第14選挙区)のブロンクス区にある選挙対策事務所に入り、戸別訪問を行ったときのことである。筆者と選挙区を回ったヒスパニック系の大学生は、現代の米国における資本主義と、それがもたらす極端な経済格差に疑問を持っており、富の再配分を支持しているとはっきりした口調で述べた。

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス候補(当時)と筆者(ニューヨーク市ブロンクス区)

 オカシオ=コルテス下院議員は、アメリカ民主社会主義者(DSA)のメンバーであり、自身を民主社会主義者と呼ぶバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)をメンター(師)として仰いでいる。彼女は、経済格差是正を争点の1つに取り上げ、富裕層への増税や最低賃金の引き上げを訴え、この選挙の勝利を収めた。この時、原動力となったのは、若者や革新派からの強い支持であったと言われる。

 さて、民主社会主義者の象徴的な存在となっているのが、ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニ氏である。名前から推察できるように、彼はいわゆる白い欧系の米国人ではない。また、前ニューヨーク市長のエリック・アダムズ氏のようにアフリカ系でもない。マムダニは、ウガンダ生まれで、両親がインド系で、イスラム教徒である。

 しかも彼は、いわゆる市営バスの無料化、保育の無償化、住宅賃金の値上げ凍結および市営食料品店の開設などを選挙公約として掲げて当選した。今秋の中間選挙に向けた予備選挙では、市長選などを含めると西部コロラド州、東部ニュージャージー州、東部ペンシルバニア州並びにワシントンD.C.で、民主社会主義の候補が勝利を収め、民主社会主義は、もはや、ニューヨーク市のみの現象ではなくなってきている。

 2010年中間選挙では、保守派の市民団体ティーパーティーから支持を得た候補が当選し、ティーパーティー旋風が吹き荒れた。2026年中間選挙で民主社会主義の候補が旋風を引き起こすのか――。

 このような状況の中で、トランプは民主社会主義を共産主義にすり替え、「民主党=共産主義」のレッテルを貼り、共産主義を秋の中間選挙の主要な争点にする戦略をとっている。彼は建国250周年のイベントの一環として7月3日、中西部サウスダコタ州マウント・ラシュモアで演説を行い、「我が国で共産主義の脅威が再燃している」「共産主義は米国の自由に対する道徳的脅威である」「米国は決して共産主義にならない」と述べて、共産主義を繰り返し批判した。

 ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は7月23日、定例記者会見で、民主党の新しいリーダーシップは共産主義であり、キューバを失敗例として挙げて、同党にマイナスのイメージを塗りつけた。

 トランプの狙いは、今回の中間選挙で共産主義にアレルギーを持つ高齢者の票を獲得するないし、民主党に投じられる有権者の票を減らすことにもある。

 しかし、トランプのラシュモアでの演説の直後に行われたエコノミストとユーガブの全国共同世論調査(2026年7月17~20日実施)では、米国における共産主義の脅威に関して、18%が「大きな脅威」、25%が「中ぐらいの脅威」、23%が「小さな脅威」、33%が「全く脅威なし」と回答した(図表3)。特にZ世代の若者(18~29歳)は、20%が「小さな脅威」、43%が「全く脅威なし」と答えた。米国人自体は、共産主義をあまり脅威と捉えていない。従って、トランプのこの選挙戦略は効果を上げないし、切り札にもならない可能性が高い。


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