「我々対彼ら」――対立構図による分断
通常の大統領選挙戦でも、対立候補に対峙するのであるが、選挙後は一転して当選した大統領は、「団結」や「統合」を強調する。ところが、トランプは「トランプ1.0」から一貫して、「我々対彼ら」という対立構図を維持し、支持基盤を固めてきた。「我々」は主としてMAGAである。「彼ら」は不法移民やリベラル、メディアあるいは非MAGAである。「彼ら」は道具として使われ、トランプの攻撃の的となり「犠牲者」でもある。今回の中間選挙では、「我々対共産主義(者)」の対立構図が用いられる。
このトランプの対立構図を利用した選挙戦略は、社会の分断を深化させ、固定化するので極めて危険な戦略である。
心理学の視点から述べると、内集団(in-group)対外集団(out-group)という言葉で説明できる。一般に、人々は自分が属する内集団に対しては「好意的な態度」をとる。一方、所属しない外集団に対しては偏見のある態度、即ち、「非好意的な態度」「敵意のある態度」や「嫌悪のある態度」をとる。
リーダーが「我々対彼ら」という対立構図を作り、偏見やステレオタイプ(固定観念)を強化すると、社会は「分断」される。そのようなリーダーは、「分断」が「票」になり、自分に有利に働くことを認識している。「トランプ1.0」以来、「分断」が政治や社会にもたらした事態は深刻で、その解決や解消は困難な課題となっている。そのことは、米国の研究者やジャーナリストおよび評論家の指摘を待つまでもなく、米国市民が日常生活の中で感じ取っている。
今回の中間選挙においてもトランプは、分断を自身のアドバンテージにする戦略をとる。米国は建国以来、「United(統合)」を強調してきた。「トランプ1.0」の深刻な分断を引き継いだジョー・バイデン前大統領は、米国社会における「統合」の重要性を米国民に訴え、その実現を目指してきた。しかし、今回の中間選挙で、米国社会は統合からますます遠ざかってしまうだろう。
